【8月28日 東方新報】東京・上野の東京国立博物館で開かれている特別展「三国志」に連日、多くのファンが訪れている。三国志を代表する英雄・曹操(Cao Cao)の墓からの出土品をはじめ、会場には当時の品物が並ぶ。小説、人形劇、漫画、ゲームなどを通じて日本の三国志人気は常に底堅い中、今回は考古学の視点から三国志の魅力を味わえる。

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 魏の礎を築いた曹操の墓が中国・河南省(Henan)で発見されたのは2009年。特別展「三国志」では、曹操の墳墓の構造をそのままの大きさで再現している。そして、この墓から出土し、曹操の墓であることを決定づけた石牌(せきはい)「魏武王常所用挌虎大戟(魏武王が愛用した虎をも討ち取る大戟)」も展示されている。

「三国志演義」をベースにした物語では、曹操は「乱世の奸雄(かんゆう)」と言われ、ずる賢い悪人のイメージが強い。だが、「人徳と才能は一体」と考える儒教の倫理観が強かった当時、曹操は新たな人材を求め「唯才是挙(ただ才能だけを挙げよ)」という「求賢令」を発するなど、常識にとらわれない実力主義、合理主義の人だった。自分の墓にもその精神は貫かれ、「情勢は不安定であるから、しきたりに従わず、埋葬後も喪に服す必要はない。金銀玉宝も墓に入れてはならぬ」と遺言を残している。今回発掘された曹操の墓は、盗掘はされているが金銀玉宝などで装飾した痕跡は見られず、今に伝わる曹操の人物像が「証明」されたと言える。

 邪馬台国の卑弥呼が魏に使者を派遣した記録「魏志倭人伝」は有名だが、日本の古墳からは実際、魏の年号を記した鏡が見つかっているという説明も会場にある。三国志の世界と古代日本がつながっているロマンにも思いをはせることができる。

 会場で楽しめるのはそれだけではない。戦車の車輪に取り付けた武器「撞車頭(どうしゃとう)」、投石機で使われた石球、矢を放つ「弩機(どき)」、やじり、剣、盾、まきびしなど魏・呉・蜀で使われた武器、当時の貨幣・五銖銭(ごしゅせん)や木簡、金印、六博盤(すごろくゲーム盤)などが展示されている。劉備(Liu Bei)や関羽(Guan Yu)、張飛(Zhang Fei)らがこうした武器を使って戦場を駆け巡り、諸葛亮(Zhuge Liang、孔明)が兵士の指揮を執る。そうした三国志の物語を想像することができる。

 日本において三国志は、江戸時代の元禄年間に「三国志演義」が「通俗三国志」として和訳され、早くから庶民の間で人気となっていた。近代以降も吉川英治(Eiji Yoshikawa)氏の小説、横山光輝(Mitsuteru Yokoyama)氏の漫画、NHKの人形劇、そしてゲームを通じて、若者から高齢者まで幅広い三国志ファンがいる。その中で、考古学から三国志を読み解くというのは新たな楽しみ方と言える。中国では従来、三国志時代の遺跡への関心は低かったが、曹操の墓の発見をはじめ、近年は重要な発掘が相次いでいる。今後も、三国志ファンを楽しませてくれる発見が待ち望まれる。(c)東方新報/AFPBB News