【8月31日 東方新報】1億5300万元(約22億8000万円)以上の賄賂を受け取ったとして2017年5月に無期懲役の判決を受けた王保安(Wang Baoan)元国家統計局長が、企業の費用持ちの代理母出産で2人の男児をもうけていたことがこのほど公開された判決状で明らかになった。代理母出産で「子宝」を賄賂にするというケースが発覚したのは、これが初めて。

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 判決状によれば、王元局長は財政部の官僚時代、常々、息子がいないことを不満に思っていたところ、海特電子集団(Heter Electronics Group)および山東神工海特電子科技の事実上のオーナー、関成善(Guan Chengshan)被告が代理母仲介業者を探して紹介した。そして、2人の男児を山東省(Shandong)や北京市郊外で代理母に出産させ、その費用346万元(約5150万円)あまりを支払ったという。海特電子集団はその見返りに1億元(約14億9000万円)近い財政補助などを受け取っていた。2018年12月、関被告は執行猶予付きの懲役1年6月の判決を受け、海特電子集団など2企業に対してはそれぞれ罰金80万元(約1200万円)の支払いが命じられた。

 代理母はネット広告を通じて関被告の妻が探し、2度にわたってそれぞれ別の仲介業者を通じて代理母契約に調印。2015年、2016年と相次いで男児2人を得た。二子目の代理母は男児に限るという性別指定があったため、代理母は数回妊娠を失敗しており、時間と費用が余分にかかったという。念願の息子を得たとき、王元局長は53歳で、まもなく失脚した。

 中国では、代理母出産について「人類補助生殖技術管理弁法」で、中国国内の医療従事者が代理母出産技術を使用することは明確に禁止しているが、人工生殖法に関する包括的な法律はまだなく、代理母出産をあっせんする業者は国内にも少なくない。

 今回の事件は、高級官僚の高額収賄というだけでなく、国内で行われた代理母出産にかかわった点でも、女性の人権や人命の関わる代理母出産が賄賂に使われた点でも悪質とみられ、生命倫理、道徳、人道的観点からも、従来の収賄事件以上に世論の批判が高まっている。ネット上では、「官僚腐敗によって誕生した」2人の男児の今後の人生を心配する声も多い。(c)東方新報/AFPBB News