【8月24日 東方新報】中国電子商取引最大手の阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング、Alibaba Group Holding)の蔡崇信(Joe Tsai)執行副主席が、米プロバスケットボール協会(NBA)のブルックリン・ネッツ(Brooklyn Nets)を買収した。買収総額は、蔡氏が昨年取得した株式分も合わせて23億5000万ドル(約2504億円)。ニューヨーク・ブルックリンにある本拠地も10億ドル(約1065億円)で購入し、買収規模は米スポーツチームで歴代最高額という。世界のスポーツ市場を席巻しているチャイナマネーが、米バスケ界にも進出したと注目されている。

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 世界の経済を動かしてきたチャイナマネー。スポーツ界でも多大な影響を与えるようになったのは、中国政府が2014年、「スポーツ産業を2025年までにGDPの1%レベルに成長させる」と新たな政策を打ち出したことがきっかけだ。政府の方針を受け、中国の企業や実業家が世界のスポーツに関心を示すと、そのターゲットはサッカーだった。

 中国・不動産大手の万達集団(Wanda Group)は2015年、スペイン1部リーグの強豪アトレティコ・マドリード(Atletico de Madrid)の株式の20%を取得。実業家の李勇鴻(Li Yonghong)氏らは2017年、イタリア・セリエAの名門、ACミラン(AC Milan)を7億4000万ユーロ(約873億円)で買収した。2018年のW杯ロシア大会(2018 World Cup)では、中国企業の看板ばかりがピッチで目についた。

 しかし、中国政府が外貨流出を規制するようになり、「欧州サッカーが中国に乗っ取られる」という懸念が欧州で広がるようになると、「爆買い」はトーンダウン。欧州のクラブに投資した中国企業や実業家は次々と株式を手放し、経営から離れるようになった。

 米欧諸国が「安全保障」を理由に、中国からの投資や買収を拒否するようになったことも影響が大きい。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が中国に強硬姿勢を取っていることはその象徴だ。

 そんな中、今回明らかになった蔡氏によるNBAチームの買収。蔡氏は馬雲(ジャック・マー、Jack Ma)氏とともにアリババを築き上げた一人として知られ、アリババの重要な投資やM&Aの多くを主導したことで「ジャック・マーの後見人」「アリババ2番目の男」とも呼ばれる。中国でバスケはサッカーに次ぐ人気スポーツであることから、今回の買収により、中国でアリババのブランドイメージをさらに高めることになる。それと同時に、中国と対立を続ける米国における有名スポーツチームを、中国企業の幹部が買収した意味は大きい。チャイナマネーが世界のスポーツ界に今後も影響を与えていくことと、台頭する中国が超大国・米国に一方的に屈しない姿勢を表しているようだ。(c)東方新報/AFPBB News