【9月1日 AFP】リトアニア東部にあるイグナリナ(Ignalina)原子力発電所で3時間に及ぶツアーに参加していた米国人男性は、廃炉となった原子炉の屋根を歩きながら、「全然怖くない」と話した。

 イグナリナ原発は、約450キロ離れたチェルノブイリ(Chernobyl)原子力発電所と設計が類似しており、昨年は米ケーブルテレビ局HBOの人気ドラマ「チェルノブイリ」の屋外シーンがここで撮影された。

 旧ソ連時代に造られた同原発は以前から一般公開されていたが、5月のドラマ放映開始以降は観光客が急増した。観光客は白いつなぎを身に着け、原子炉の屋根を歩いたり、ドラマに似せてつくられた指令室などさまざまな設備を見学したりする。

 イグナリナ原発の広報担当者はAFPに対し、ドラマのおかげで新たな来場者が増えたと語った。多くは国内観光客だが、ポーランドやラトビア、英国といった外国からの観光客もいる。7月の来場者数は900人に上り、年内のツアー予約は「ほぼ埋まっている」という。

■「ダークツーリズム」

 旧ソ連時代に現在のウクライナに建設されたチェルノブイリ原発は1986年、試験中に原子炉の一つが爆発し、史上最悪の原発事故を引き起こした。放射能汚染は、欧州の広範囲に及んだ。

 ウクライナ同様、旧ソ連の一部だったリトアニアは2009年12月、チェルノブイリ原発と同じ形式の原子炉2基を擁していたイグナリナ原発の廃炉に向けた作業を開始した。2004年に欧州連合(EU)に加盟する際、リトアニアは交換条件としてイグナリナ原発の閉鎖を求められていたからだ。

 ドラマ「チェルノブイリ」のロケ地となったリトアニアの他の場所でも、ツアーが行われるようになった。首都ビリニュス北部のある町は、チェルノブイリ原発事故後に立ち入り禁止となった人口約5万人の町、プリピャチ(Pripyat)という設定で撮影に使われた。地元のある若者は、祖父が所有する旧ソ連時代のアパートを改装し、民泊仲介サイト「エアビーアンドビー(Airbnb)」に登録したという。