【8月21日 AFP】コアラは餌とするユーカリの種類のえり好みが激しく、生息地の消失による悪影響を受けやすいが、オーストラリアの研究チームは、別の品種のユーカリを食べるコアラのふん便を摂取させることで、コアラの飢餓問題を解決できるとする論文を発表した。

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 この研究では、経口摂取できるカプセル入りに加工したふん便をコアラに与えて腸内の微生物環境を変化させ、食べられるユーカリの葉の種類を広げた。

 専門誌「アニマル・マイクロバイオーム(Animal Microbiome)」に20日掲載された論文の主執筆者で、豪クイーンズランド大学の化学・分子生物学部(University of Queensland、Chemistry and Molecular Biosciences)に所属するミカエラ・ブライトン(Michaela Blyton)氏は、ビクトリア(Victoria)州ケープオトウェー(Cape Otway)でコアラの個体数が激減したことがこの研究を始めるきっかけになったという。

 ブライトン氏は、「2013年にコアラの個体数が増えて過密状態となり、彼らが好むユーカリの一種マナガムの木が枯れてしまった」と説明。その結果、70%のコアラが餓死する事態となったが、コアラたちが同じユーカリ属のタスマニアン・オークを食べる兆しは一切なかった。一方、コアラの中にはタスマニアン・オークしか食べないものもいる。

 ブライトン氏と西シドニー大学(Western Sydney University)の共同研究者は、コアラの腸内に存在するマイクロバイオーム(微生物叢<そう>)が原因で、コアラが摂取できる食べ物が制限されていると考え、マナガムしか食べないコアラにタスマニアン・オークを食べるコアラのふん便を与えて微生物を移植し、食の幅を広げることが可能かどうかを調べた。

 研究チームはマナガムしか食べない野生のコアラを捕獲し、タスマニアン・オークを食べるコアラのふん便を酸に強いカプセルに入れて投与。これによりマナガムしか食べないコアラの腸内微生物が変化し、タスマニアン・オークも食べられるようになることを発見した。

 ブライトン氏は、「コアラはいつものユーカリの木が食べ尽くされたり、新たな土地に移されたりした場合、新しい餌に適応することが生まれつき困難なのではないか」とコメントした。(c)AFP