【8月21日 AFP】スペインの非政府組織(NGO)「プロアクティバ・オープン・アームズ(Proactiva Open Arms)」の救助船「オープン・アームズ(Open Arms)」に助けられたものの下船できずにいた移民83人が21日未明、イタリアのランペドゥーサ(Lampedusa)島に上陸した。同国司法当局が上陸を認めるよう命じたことを受けた動き。上陸の様子はテレビ中継された。

 同船はランペドゥーサ島沖に6日間停泊していたが、入港禁止措置をめぐるマッテオ・サルビーニ(Matteo Salvini)副首相兼内相への捜査のさなか、地元検事が移民らを上陸させるよう命じた。

 移民の多くは小型ボートでリビアから欧州に向かうという危険な航海を試みて遭難した人々で、オープン・アームズに救助されてから船上で19日間過ごしていた。一人ずつ渡り板を歩いて島に上陸する移民の中には、足を引きずる人や包帯を巻いた人もいた。

 プロアクティバ・オープン・アームズは、多くの移民が心的外傷後ストレスに苦しんでおり、収拾がつかない事態になっていると警告していた。

 救助船には当初、主にアフリカ系の移民147人が乗っていたが、停泊が延びる中、一部が診療を受けるため船を下りたほか、未成年者全員の上陸が認められていた。

 同船では20日、泳いで島に渡ろうとした移民15人がライフジャケットも着用せずに海に飛び込む事件が発生。また、長期の足止めでいら立ちを募らせ、けんかをしたり、自殺をほのめかしたりする人も出ていた。

 ルイジ・パトロナッジョ(Luigi Patronaggio)検事は司法警察と医師らによる調査の後、船上に緊張が生じているとの理由で移民らをランペドゥーサ島に上陸させるよう命じた。

 スペインは20日、移民らを引き取るため海軍の哨戒艇1隻を、スペイン南西部のロータ(Rota)からランペドゥーサ島に向けて出発させていた。救助船オープン・アームズに随伴してスペインのパルマデマジョルカ(Palma de Mallorca)に行く予定だったが、移民が上陸したことを受け哨戒艇が引き返すのかどうかは現時点では明らかにされていない。

 欧州連合(EU)加盟国のうちフランス、ドイツ、ルーマニア、ポルトガル、スペイン、ルクセンブルクの6か国は全員の受け入れを申し出ていたが、移民に厳しい姿勢を取ってきたサルビーニ副首相兼内相は救助船の入港を許可することを拒否。あらゆるNGOが運航する救助船に対し、イタリアの港への立ち入りを禁止している。

 イタリアでは20日、極右政党「同盟(League)」を率いるサルビーニ氏の連立政権解消の動きに抗議し、ジュセッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相が辞任を表明。サルビーニ副首相兼内相は21日にも職を失う可能性がある。(c)AFP/ Charles ONIANS