【8月19日 AFP】リビアでの拷問の光景、ダルフールの戦火、スーダン南部の故郷の村、セネガルを象徴するバオバブの木――移民救助船「オーシャン・バイキング号(Ocean Viking)」の船橋に展示された絵は、救助された人々の人生を如実に物語っていた。

 オーシャン・バイキング号は、地中海で移民・難民の救助などに取り組む仏NGO「SOSメディテラネ(SOS Mediterranee)」と、国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が共同運航する救助船。現在、救助した移民356人を乗せ、寄港許可を求めて洋上に待機している。

 船橋の絵は、船上の移民たちにクレヨンと紙を渡し、最もひどい悪夢の体験と最高の思い出について描いてもらったものだ。

 プロサッカー選手を夢見るアダムさん(18)は、若い男性が手足を縛られて天井からつるされ、整列した他の捕虜たちの目の前で男2人にむち打たれるリビアでの光景を描いた。「ああ、こうだった。私たちも列に並んで、自分の番が来るのを待っていた」と、絵を眺める人々の中からささやくような声が上がった。

 一方、良い思い出を描いた人々もいる。エッゾさんは、スーダン・ヌバ山地(Nuba Mountains)から程近い故郷の村の牧歌的な風景を描いた。村の前には湖があり、そこで泳ぎ方を覚えたのが思い出だ。

 また、10日前に今にも壊れそうな小舟に身を寄せ合って海上をもがき進んでいたところを救助され、オーシャン・バイキング号に乗船した経緯を絵にした人もいる。

 同号は、欧州のいずれかの国から寄港許可が下りるまで地中海上での待機を余儀なくされている。(c)AFP