【8月19日 AFP】英領ジブラルタル(Gibraltar)は18日、シリアに違法に石油を運んでいたとして拿捕(だほ)した後、解放を決定し退去させる準備をしていたイランの大型石油タンカー「グレース1(Grace 1)」について、米国が要請していた差し押さえを行わないと発表した。

 ジブラルタル自治政府は「ジブラルタルで適用される欧州連合(EU)の対イラン制裁は、米国で適用されるよりもはるかに狭いものだ」と指摘し、米国の対イラン制裁はEU内に適用されないため、グレース1の差し押さえ命令を出すよう裁判所に求めることはできないとしている。

 駐英イラン大使はツイッター(Twitter)に、グレース1には新たな乗組員が乗り込み、18日夜に出航する見込みだと投稿した。

 ジブラルタル当局は7月4日、EUの制裁に違反してシリアへ石油を輸送しようとした疑いがあるとしてグレース1を拿捕。その後今月15日にジブラルタルの裁判所は、グレース1の解放を命じていた。

 だが米司法省は今月16日、グレース1は米国がテロ組織に指定しているイラン革命防衛隊(IRGC)によるシリアへの違法輸送に関与していたとして、グレース1の差し押さえを求めていた。

 グレース1の拿捕によりイランと英国の関係は急速に悪化した。イランはその後、英船籍のタンカー「ステナ・インペロ(Stena Impero)」を拿捕。報復措置とみられている。(c)AFP