【8月29日 CNS】米プロバスケットボール(NBA)の夏のオフシーズン期間中、中国系米国人スタープレーヤーの林書豪(ジェレミー・リン、Jeremy Lin)は、「自分はNBAで必死に頑張ってきたが、いまだに新しいオファーを手に入れていない」と涙ながらに訴えた。この発言はファンやプレーヤーの間で大きな話題となり、「挫折している『億万長者』のジェレミー・リンに同情すべきかどうか」と議論が起きている。

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 1988年に米国で生まれたジェレミー・リンは、バスケットボールのポイントガードだ。今年2月にアトランタ・ホークス(Atlanta Hawks)に契約を解除された後、トロント・ラプターズ(Toronto Raptors)に移籍。彼がプレーする8番目のNBAチームとなった。幸運なことに、ラプターズは初めて進出したNBAファイナルでゴールデンステイト・ウォリアーズ(Golden State Warriors)を破り、チャンピオンシップを勝ち取った。ファイナルで52秒しかプレーしなかったリンだが、彼にとってNBA初の「勝利」となった。

 しかし、チャンピオンシップは彼の次のオファーにつながらなかった。オフシーズンでフリーエージェントになった後、7月末のセッションで彼は涙を流し、「なんだかNBAからもういらないと言われたような気がする」と心境を語った。

 NBAプレーヤーとしては非常に珍しいこうした姿は、すぐにファンや一部のプレーヤーの間で大きな議論を呼び起こした。すでに引退したケンドリック・パーキンス(Kendrick Perkins)氏やホークス所属の選手トレイ・ヤング(Trae Young)などは、SNSを通じてリンを励ました。ヤングは、「リン旋風(Linsanity<Linと狂気を意味するInsanityを組み合わせた造語>)の終わりはまだ遠いはずだ」と語った。

 この思いはほとんどのファンと共通している。ジェレミー・リンのキャリアは、波乱に満ちていた。最初は身体的条件やプレーで目立った点はなく、NBAドラフトに指名されず、その後に契約したチームもわずか12日で戦力外通告されたり、負傷でシーズンを棒に振ったりと、さまざまな挫折を経験した。

 2012年初め、ニューヨーク・ニックス(New York Knicks)の主力選手の代役として出場すると、5試合で136ポイントを獲得し、NBA史上最初の5試合で最高得点を獲得したプレーヤーとなった。中国系米国人で名門ハーバード大学(Harvard University)卒業という異色の経歴もあって人気が沸騰し、「リン旋風」を巻き起こした。その後もチームを転々としながら、たびたび脚光を浴びるプレーを見せてきた。そんなスタープレーヤーが「仕事が見つからない」と嘆くことに、多くの人が同情した。

 しかし、違う声も徐々に出始めている。「ジェレミー・リンは大多数の人に比べれば十分成功しており、同情する必要はない」という意見だ。

 米女子プロバスケットボール協会(WNBA)のスタープレーヤー、チャイニー・オグウマイク(Chiney Ogwumike)はテレビ番組で「ジェレミー・リンの気持ちは理解できるが、リンのNBAでの収入総額は6000万ドル(約64億円)を超えている。『リン旋風』というフレーズも、彼がバスケの世界で今後も活躍し続けるのに役立つはずだ」と話した。また、「リンは名門ハーバード大学の卒業生なので、引退してもいい暮らしができるはずだ」という。

 さらに一部の人は「ジェレミー・リンにオファーが来ないのは、ラプターズでのパフォーマンスが優れなかったため。実力の世界であるNBAでは、ごく普通のことだ」と指摘している。

 同じように懸命にプレーしても報酬が比較的少ないWNBAのプレーヤーにとって、「リンには同情できない」というのはもっともなことだ。多くのプロ選手は、短いキャリアの間で将来の生活のための資金や名誉を獲得することに必死だ。しかし、リンにはそういう心配事はない。

 中華圏で人気が高い彼の後ろには巨大な中国市場があり、それは他の米国人プレーヤーと比べものにならない。最近、彼はある中国のスポーツブランドと契約を結んだとされ、中国プロバスケットボールリーグ(CBA)に加入した。

 ただ、NBAファンの一部にとって、NBAはただのビジネスやスポーツではなく、精神的な支えでもある。彼らの心の中で「リン旋風」とは、弱者の反撃を象徴するものでもある。生きた「英雄の夢」であり、平凡な生活の中で自らを励ます存在でもある。

 リンがCBAを選んだことは、中国のファンにとっては確かに喜ばしいことだ。だが、より多くのファンは彼がNBAからオファーを受けることを願っており、その可能性が低くとも、もう一度「リン旋風」を見せてくれることを望んでいる。(c)CNS/JCM/AFPBB News