【9月9日 AFP】台湾・中央山脈の霧に覆われた山麓に位置する軟橋(Ruan Chiao)村には、若者がほとんどいなかった。だが、アーティストの呉尊賢(Wu Tsun-hsien)さん(55)が家々をカラフルなキャンバスに変え、インスタグラム(Instagram)世代を村に呼び戻した。

 ブラシをベージュ色のペンキの缶に浸し、丁寧に色を塗り重ねていく。制作中の最新作には、伝統的な竹で編んだ笠をかぶった農民が動物の世話をする活気ある田園風景が描かれている。

 呉さんは「この村は老人でいっぱいだ」と嘆く。自分の子どもたちを含め大多数の若者が都会に移住し、残された高齢者は憂鬱(ゆううつ)な気持ちで孤独に暮らしているという。

 だが、呉さんのグラフィティが自撮り映えする場所を探す若者を村に引きつけた。「多くの観光客を魅了した。ここに残された高齢者はもはや退屈していない。これが私にとって最大の収穫だ」と呉さんは笑う。

 呉さんだけではない。現在、台湾にはいわゆる「グラフィティ村」が6か所あり、若者が去った村をグラフィティが活気づけている。 (c)AFP/Jerome TAYLOR