【8月15日 AFP】伝説的オペラ歌手、プラシド・ドミンゴ(Placido Domingo)氏からセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)を受けたとする女性らの証言が大々的に報じられているなか、同氏の出身国スペインでは浮上した疑惑に対して、慎重な意見や懐疑的な見方が各所から出ている。

 スペインオペラ界の関係者らは14日、ドミンゴ氏を「色男」と表現したが、性的な嫌がらせを誰かにしているところは見たことがないと口をそろえた。

 78歳のドミンゴ氏はスペイン・マドリード出身で、ルチアーノ・パバロッティ(Luciano Pavarotti)氏、ホセ・カレーラス(Jose Carreras)氏とともに「三大テノール」として知られている。

 ドミンゴ氏のセクハラ疑惑は、歌手8人とダンサー1人の証言によって浮上した。9人は、AP通信(Associated Press)の取材で、1980年代からセクハラを受けていたと語っている。これを受けて米ロサンゼルス歌劇場(LA Opera)は13日、ドミンゴ氏に対する複数のセクハラ疑惑の調査に乗り出し、予定されていた公演の中止を発表した。また、その他2か所の歌劇場もドミンゴ氏の公演中止に踏み切っている。

 嫌疑をかけられたドミンゴ氏は声明を発表し、「やり取りや関係の全てが常に歓迎され、同意があった」と信じており、女性らの話は「不正確」であると主張している。

 一方、スペイン東部バレンシア(Valencia)の芸術宮殿(Palace of Arts)は、12月初めに予定しているドミンゴ氏の4公演を実施すると発表している。推定無罪の原則に基づき、裁判所が判断を下すまでは「適切な行動」は起こさないとの意向を示した。

 芸術宮殿はまた、ドミンゴ氏に対する苦情を受けたことはなく、職員に対して「何らかのハラスメント」が行われたということも認識していないことを明らかにしている。

 他方で、スペイン保守系全国紙ABCも論説で、セクハラについて証言した9人の女性のうち名前を明かしているのは1人だけだとし、ドミンゴ氏を擁護した。