【8月14日 AFP】気候変動をめぐる報道において、著名な気候研究者よりも地球温暖化に懐疑的な見方を示す著名人の方が取り上げられることが多く、そのことが一般市民を混乱させ、温暖化対策を遅らせているとの論文が13日、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」に掲載された。

 論文によると、2000~2016年の間にメディアに登場した著名人を調査したところ、地球温暖化に懐疑的であったり気温上昇は「自然」に起因するものだと論じたりする学者・実業家・政治家が、同人数の権威ある研究者たちより5割多く取り上げられたという。

 また、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)やガーディアン(Guardian)、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)やデーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)といった高い水準の裏付けに基づく英語圏の主要メディアでさえ、懐疑論者の発言の方が研究者よりわずかに多く引用されていた。

 化石燃料の燃焼が主因である地球温暖化が文明社会と地球上の大半の生物に大きな脅威をもたらすという意見は、実際には気候研究者の間では圧倒的となっている。また、たった1度の気温上昇でも海面の上昇や破滅的な異常気象の頻発化につながっており、地球の気温は21世紀末までにさらに3度上昇するとみられている。

 カリフォルニア大学マーセド校(University of California at Merced)のアレクサンダー・ピーターセン(Alexander Petersen)氏をリーダーとする論文著者らは、「気候変動を否定する人々は、政治や科学の世界で強い意見を形成することに成功している」と指摘。また、否定論者の意見がより多く報じられることにより「専門研究者たちの信頼ある権威も傷つけられ、一般的な科学的対話を否定論者たちが仕切ってしまう傾向が強まる」と懸念を示した。

 研究では2000~16年に報道・発行された10万もの媒体などから研究者386人および否定論者386人の署名記事、引用、コメントを抽出し調査。結果、否定論者の方が研究者より49%多くメディアで取り上げられていたことが分かったという。

 研究チームはまた、フェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)といったソーシャルメディアの影響の高まりにより、気候変動に関する報じられ方が不均衡になっていると指摘した。(c)AFP/Marlowe HOOD