【8月14日 AFP】フランスの首都パリの市民たちは、夏の風物詩である哀愁を帯びたカモメの鳴き声を聞くために、もはや浜辺に行く必要はなくなった──同市内では、建物屋上にカモメが集まるようになった一方、その鳴き声は日増しに大きくなっており、耳障りな音が多くの市民をいら立たせている。

 海辺からパリまでは車で2時間ほどかかるが、パリにはますます多くのカモメが集まり、ハトと屋上で場所の取り合いを演じている。 

 パリ北東部に位置する、丘の多いベルビル(Belleville)地区は、カモメたちのお気に入りの営巣地の一つ。

 警備員として働く50歳代のロドルフさんはAFPの取材に対し、「20年前にパリに移ってきた時は、ハトが鳴き、スズメが歌うのを聞くのが喜びだった。しかし、ここ何年かで大きなカモメがパリの家々の屋根に来るようになり、早朝からわめき立てるようになった」と述べた。

「目覚まし時計をかけなくてもよくなった」と話すロドルフさんは、「地獄のような」鳴き声に明らかにいら立った様子だった。

 カモメは他にも、火災に見舞われたノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)周辺やセーヌ(Seine)川の中州、歴史的なユダヤ人地区のマレ(Marais)地区などに集まっている。

 同市にある国立自然史博物館(National Museum of Natural History)の鳥類学者、ジャンフィリップ・シブレ(Jean-Philippe Siblet)氏は、カモメのパリへの移動は、沿岸部で餌を見つけるのが困難になっていることが関係していると指摘する。沿岸部では、観光や開発のために生態系の破壊が進んでいる。

 雑食動物であるカモメは、パリ郊外の野外ごみ捨て場に豊富な餌を発見。パリの建物の多くが高層住宅であるため、屋根は捕食動物からの避難場所となっている。

 シブレ氏は、カモメの鳴き声は「警察や救急車両のサイレン音や、集団の叫び声や、隣人が鏡を掛けるためにドリルで壁に穴をあける音など、通りで聞こえる騒音公害に比べればよっぽどまし」だと主張した。

 映像は、8月2~7日に撮影。(c)AFP / Guillaume BONNET and Clare BYRNE