相次ぐ銃乱射に苦しむ米国、ウッドストック再来は望み薄
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■社会の変化
衛生の問題以上に深刻なのは、屋内外のコンサートでの事件など、近年急増している大量殺人だ。このために、ウッドストックのような大規模な集まりが発生する可能性は薄れ、かつてのような気楽なイベントに参加したがる人も見込めなくなっている。
1999年のウッドストック記念フェスティバルは、暴力、略奪、放火、レイプについての報道であふれた。2015年にフランス・パリの劇場「バタクラン(Bataclan)」で起きた同時襲撃事件では、多くの犠牲者が出た。
2017年には、米ネバダ州ラスベガス(Las Vegas)で野外コンサート会場に向けて男が銃を乱射し、数十人が死亡した。同年5月には英マンチェスター(Manchester)で行われていた米歌手アリアナ・グランデ(Ariana Grande)さんのコンサートで自爆攻撃事件が起き、多数が死亡した。
「コーチェラ・バレー・ミュージック&アートフェスティバル(Coachella Valley Music & Arts Festival)」「グラストンベリー・フェスティバル(Glastonbury Festival)」「ロラパルーザ(Lollapalooza)」といった音楽フェスティバルは、ここ数十年でブームとなっている。だが、いずれもチケットは高額で規制が厳しく、防犯ゲートや探知機、警備員などでしっかりと守られている。
ニューヨークの観光名所タイムズスクエア(Times Square)での大みそかの祝賀イベントなど、ニューヨーク市警(NYPD)で数十年にわたり警備計画の作成に関与してきた元巡査部長のジョセフ・ジャカローネ(Joseph Giacalone)氏は、「かつては違法薬物や酒の持ち込みが一大事だったが、今や大量破壊兵器を持ち込む者による無差別殺人が問題となっている」と語る。
「大規模な銃乱射は以前にもあった。だがその数は少なく、ごくまれだった」。1966年にテキサス州オースティン(Austin)で、銃乱射による大量殺人が起きたが、その後の18年間、似たような事件は起きていない。
ジャカローネ氏は過去20~30年の間に社会構造が変化し、ウッドストック・フェスティバルのユートピア感はもう現われないと語る。「60年代を知る人々が、同じ経験をすることはもうないだろう」 (c)AFP/Maggy DONALDSON