【8月13日 AFP】海底に生息するサメの一種は、仲間のサメに見えるよう鮮やかな緑色の光を体から放つが、この生物蛍光に関係する分子を特定したとの研究結果が8日、発表された。この分子は微生物感染を防止するなどその他の機能もあるという。

 学術誌「アイサイエンス(iScience)」に掲載された論文では、これまで知られていなかった低分子代謝産物の一群が特定された。

 論文の共同執筆者で、米ニューヨーク市立大学(CUNY)のデビッド・グルーバー(David Gruber)教授はAFPの取材に、サメの発色過程はクラゲやサンゴなど他のあらゆる種類の海洋生物の発色過程と大きく異なっていると語った。サメの発色はタンパク質ではなく小分子によるもので、青い海の中で青色光を吸収して他の色に変換する能力を独自に進化させたことを示している。

 今回の論文では、ナヌカザメとクサリトラザメの2種類のサメに着目した。グルーバー氏は、米カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)沖にあるスクリップスキャニオン(Scripps Canyon)に潜り、調査した。

 グルーバー氏によるとこの2種類のサメは「体長が1メートルくらいで、海底に横たわっており、極めて用心深く、泳ぎがあまり上手ではない」上、可視スペクトルの青端の光しか届かない水深30メートル以上の場所に生息している。この場所でサメにかまれて出血したら、その血は真っ黒に見えるという。

 グルーバー氏と共同研究者の米エール大学(Yale University)のジェイソン・クロフォード(Jason Crawford)氏は、サメの表皮が明暗2色になっていることに気付き、表皮から化学物質を抽出し調べた。その結果、明色の部分にのみ存在する蛍光分子を発見した。サメはこの分子の助けにより、青色光を吸収し緑色光を放つという。

 サメの目は特殊な構造をしており、青色と緑色の境界域の光に対する感受性が高い。このため、サメの目から見るとサメの体と発光していない周囲との境に明確なコントラストが形成される。

 潜水調査中にグルーバー氏はまた、サメが2匹から最大10匹までの群れで存在することを発見した。これはこの種のサメが社会性を持っていることを意味している。これを踏まえると、表皮が2色に分かれていることが、性別や個体識別の手掛かりになっているという仮説が考えられるという。

 さらに臭素化したトリプトファン代謝産物キヌレニンの一部は、実験室環境において細菌を死滅させることも分かった。これは、サメにとってキヌレニンが抗菌作用を持っている可能性を示唆している。

 グルーバー氏は最新の研究成果について「これらのサメはサンディエゴの桟橋のすぐ沖に存在していたが、今やっと謎が解明されつつある」と話した。(c)AFP/Issam AHMED