【8月20日 AFP】インド・ヒマラヤ山脈(Himalayas)の標高5360メートルに位置するチャンラ(Chang La)峠。その付近を通る世界で最も高所にある道路の一つで、13人の男性作業員たちが補修作業を行っている。

 男性たちは、数百キロ離れたインド東部ジャルカンド(Jharkhand)州からやって来た。彼らの故郷は低地にあるため、荒涼としたこの土地の寒さに慣れていない。だが、ここでは年間を通じて、暴風雪に見舞われる恐れがある。

 作業員たちはここ、ラダック(Ladakh)地方タンツェ(Tangtse)で、4か月間働くことになっている。仕事は、絵のように美しいヌブラ渓谷(Nubra Valley)とパンゴン湖(Pangong Lake)に通じる重要な観光道路を良好な状態に整備することだ。

 こうした彼らの重労働の対価は、1人当たり4万ルピー(約6万円)だ。2011年、人口13億人の21%以上が1日当たり2ドル(約210円)未満で生活していたことを考えれば、かなり割がいい。

「故郷に仕事はあまりない。(ここでの)仕事で難しいことは何もない」。スニル・トゥトゥ(Sunil Tutu)さん(30)は話す。

 労働は週6日。仕事に使うのは、自身の両手とシャベル、それに石や砂を運ぶための古いずた袋だ。地元の労働者たちも手伝ってくれる。その中には女性もいる。

 洗濯や入浴、ひげそりができるのは、毎週日曜日だけだ。毎朝、パンと紅茶の朝食を取った後、トラックの荷台に乗り込み作業現場へ向かう。日没後、最低限の設備があるだけのテントに戻ると、米とレンズ豆の夕食を取る。テントに電気は通っておらず、調理をしたり冷たい水を沸かしたりするには石油ストーブに頼るしかない。

 それでも、男性たちはくじけない。

「もし機会があれば、またここに戻って来たい」と、スシル・トゥトゥ(Sushil Tutu)さん(35)は話す。「道路作業が好きなんだ……それができるならどこでもいい」

 また、ラジシェカールさん(33)は、現場の周りには何もないので、お金が貯まると話す。「故郷では貯金ができない。飲んだり食べたりしてすぐにお金がなくなってしまう。(ここの)仕事は申し分ない。雪も山も好きだ。寒いのは苦手だけど」

 インドの地方部では、出稼ぎが一般的だ。出稼ぎ労働者の支援を行うNGO(非政府組織)「アージービカ・ビューロー(Aajeevika Bureau)」によると、法的保護や社会的保障のない危険な状況下で仕事をしている労働者は数百万人に上るという。

 インドの失業率は上昇している。2017~2018年には、1970年代以降最悪の6.1%に上った。2期目をスタートさせたナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相が直面する大きな課題だ。(c)AFP/Xavier Galana