■銃社会の米国

 ただ現状を見てみると、合衆国憲法、ローンウルフ(一匹おおかみ)型の攻撃、実行犯のイデオロギーによって、捜査は困難を強いられている。

 FBIは過去10年で、200人近くの潜在的ジハーディスト(聖戦主義者)を拘束している。ネットを通じて同様の思想を持つ人々やイスラム過激派組織とのコンタクトを模索する行為が、グループを監視する当局の捜査網に引っ掛かるのだ。

 一方、組織に属さず、インターネットなどで自ら過激思想に染まった人々を特定することは極めて難しい。マイケル・マクガリティ(Michael McGarrity)FBI副長官も議会で同様の意見を述べている。

 そして米国では、潜在的加害者の白人至上主義者が、人目を引かずに容易に銃を入手することが可能であるということも問題をさらに深刻なものにしている。

■言論の自由が妨げに

 FBIの動きを制限するものがもう一つある。表現の自由を保障し、不合理な捜査を禁じる合衆国憲法だ。

 9.11以降、ISなど特定の組織とつながりのある人物と米国内にいる個人との間で交わされる国際通信については、当局の監視を可能とする法律が成立している。だが、米国内で過激思想について議論する自国民を監視することはできない。

 これらの議論は表現の自由の範囲であり、暴力的な計画が進行中との証拠がない限り、FBIは捜査を開始することができない。これについてレイ氏は7月、「われわれは暴力行為に焦点を当てている」「FBIはどんなに不快な内容であってもイデオロギーを捜査することはしない」と議会で述べている。

 こうした現状を問題視する捜査当局や一部の政治家らは議会に対し、FBIの捜査権を拡大し、攻撃を事前に防ぐことができるよう特定の自国産テロリズムを取り締まる法律の制定を求めている。

 FBIで対諜報(ちょうほう)活動を行っていたことがあるフランク・フィグリウージ(Frank Figliuzzi)氏は米ニュース専門局MSNBCに対し、「われわれは、表現の自由とプライバシー、考えについての自由な議論、そして憎悪が暴力に変わる発火点との間のバランスを取らなければならない」と指摘している。(c)AFP/Paul HANDLEY