【8月12日 AFP】ペルーの首都リマで開催された米大陸のスポーツの祭典、パンアメリカン競技大会(2019 Pan American Games)で、金メダルを獲得した後の表彰式でドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に抗議した同国の2選手に、処分が下される可能性が浮上している。

 抗議を行ったのは、陸上女子ハンマー投げのグウェン・ベリー(Gwen Berry)と、フェンシング男子フルーレのレース・インボーデン(Race Imboden)の2選手。

 ベリーは表彰式で右の握り拳を突き上げ、下を向きながら国歌演奏を聞く抗議を行い、観客を驚かせた。これは1968年のメキシコ五輪で、陸上男子短距離のトミー・スミス(Tommie Smith)氏とジョン・カーロス(John Carlos)氏が行った「ブラックパワー・サリュート(Black Power Salute)」にならったものだった。

 一方のインボーデンは、代表の一員として男子フルーレ団体で優勝した後の表彰式で膝をついた。こちらは米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の元クオーターバック、コリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が2016年シーズンに始め、全米規模の社会問題にまで発展した抗議を踏襲している。

 抗議の意図について、30歳のベリーは「不正義の極み」に対抗するためだと米メディアにコメント。インボーデンはツイッター(Twitter)に「僕らは変わらなくちゃならない。米国代表として大会に出場し、金メダルと銅メダルを持ち帰れることは名誉だけど、大好きなはずのこの国の至らない部分の数々のせいで、誇らしい気持ちも小さくなった」と書き込んだ。

「人種差別、銃規制、移民への迫害、そして憎悪をまき散らす大統領には特に胸が痛む」「だから僕はきょう、表彰台の一番上での自分の時間を犠牲にして、問題に注目してもらうことにした。こうした問題に手を打つ必要があると僕は確信している。みなさんもエンパワーメントや変化のために、それぞれのプラットフォームを活用してほしい」

 これに対して、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は広報を通じて米スポーツ専門チャンネルESPNにコメントし、2人に対する処分を検討していることを明かした。

「今回のパンアメリカン競技大会に出場した選手は全員、参加条件に従う義務があり、その条件の一つに、政治的性質を持った意思表示を控えるというものがある」「今回、2人は大会組織委員会とUSOPCに対する誓約に違反した」「彼らの表現の自由は尊重するが、ルールを破ったことは遺憾に思う。現在は上層部で対応を検討中だ」 (c)AFP