【8月12日 AFP】米映画制作・配給会社のユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures)は、9月27日に公開を予定していた映画『ザ・ハント(The Hunt)』について、公開を無期限に延期すると10日に発表した。

 この映画は米国の深い政治的分断についての極めて暴力的な風刺作品とされている。内容は、伝統的に共和党支持者が多い地域から拉致された住民たちが目を覚ますとリベラルな「エリート」たちに取り囲まれており、銃撃されるというもので、保守派から批判の声が上がっていた。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は9日、ツイッター(Twitter)に同作品についてとみられるコメントを投稿。この映画の作品名こそ挙げなかったものの、「リベラルなハリウッドの最上層部は人種差別主義者だ」「やつらは真の人種差別主義者だ。わが国にとって非常に悪い!」と酷評し、米国で多数の犠牲者を出す銃撃事件が相次いだばかりの今、この作品を公開するのは適切ではないとする右派の批判に加わった。

 芸能誌ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)によると、作中に、裕福でリベラルな登場人物たちが狩りの対象とした住民らを「嘆かわしい人々」と呼ぶ場面がある。2016年米大統領選でヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官の陣営は、トランプ氏支持者の一部を「嘆かわしい人々」と呼んだことがあった。

 ユニバーサル・ピクチャーズは「慎重に検討した結果、この映画の公開を中止する決定をした」と発表。「今回の社会派風刺スリラーの関係者のような大胆かつ先見的なクリエイターら」を支援するとしつつも、「今はこの映画の上映に適切な時期ではないと考える」と説明した。

 同作品にはヒラリー・スワンク(Hilary Swank)やベティ・ギルピン(Betty Gilpin)が出演。制作はホラー映画専門のブラムハウス・プロダクションズ(Blumhouse Productions)。(c)AFP