【8月29日 AFP】マリオさん(51)は口笛を吹きながら、エジプト・カイロのモッカタム(Mokkatam)の丘の上にある洞窟教会として知られる聖シモン修道院(St. Simon Monastery)で、岩窟に巡らされた足場をよじ登り、彫刻に最後の仕上げを施していた。

 マリオさんは、修道院内の七つの岩窟教会と礼拝堂のごつごつした岩に、聖書の物語を刻み続けている。

 本名はマリウス・ディビッチ(Mariusz Dybich)。出身はポーランド南部クラクフ(Krakow)出身だ。教育使節としてカイロにやって来て、今では30年近くエジプトに住んでいる。

 すべては1990年代初め、現在修道院の主任司祭を務めるサマーン(アラビア語で「シモン、サイモン」の意味)神父がマリオさんに言った言葉から始まった――「この山を屋外聖書に変えてほしい」

 マリオさんは彫刻の経験がまったくなかったが、電動ドリルとチゼルハンマーを買い、数日間で初めての作品を完成させた。今では彫刻を続けて23年以上になり、これまでに完成させた作品は約70点に及ぶ。「デザインによっては完成までに5日から半年かかる」という。

 修道院は丘の上にあり、カイロを一望できる。だが参拝者はここまで来るのに、でこぼこした道に悪臭を放つごみが散らかっているスラム街を通り抜けなければならない。たどり着くのは大変だが、イスラム教を国教とするエジプトで少数派のキリスト教一派であるコプト教(信者数は人口の10%程度)の祝日や祭りのみならず、毎週行われる礼拝には何千人もが訪れる場所となっている。

 映像は、7月21日撮影。(c)AFP/Menna Zaki