【8月9日 AFP】国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8日発表した土地利用と気候変動に関する報告で、炭素排出を削減し、持続不可能な農業や森林伐採を止めない限り、食料安全保障確保と地球温暖化抑制という2つの取り組みの衝突は、今後数十年でますます厳しいものになると指摘した。

 IPCCは、人類の暮らしの基盤である土地の利用方法を迅速かつ全面的に変革しなければ、気温上昇の抑制と並行し、今世紀半ばまでに100億人に達する世界人口の食料確保という取り組みは崩壊しかねないと警告した。

 報告は、将来の温暖化に対する防壁として、現存する熱帯雨林を保護する必要性に焦点を当てる一方、惨事を避けるための対策の柱となるのは炭素排出の削減だと強調。植林とバイオ燃料の普及によって人間由来の環境上の損失を相殺できるという期待には冷水を浴びせた。

 IPCCはまた、気候変動の緩和を目的とする土地利用により、トレードオフが相次ぎ生じようとしていることを指摘。膨大な炭素吸収源である森林を再生すれば気温上昇は抑制されるが、工業型農業が多くの土地を使用している現在、その余地は限られている。また、バイオ燃料となる植物の栽培には、炭素隔離の手段として潜在力があるが、そのための土地は農地や牧草地、森林から転用しなければならない。

 報告は、バイオ燃料計画に「限定的」に土地を割り当てることで、気候上の実際の利益はもたらされ得るとする一方、大気中の二酸化炭素を年間数十億トン削減するのに必要な規模でバイオ燃料を栽培すれば、「砂漠化、土壌劣化、食料安全保障、持続可能な開発のリスクを増大させかねない」と警告した。

 報告は1000ページに及び、現在の食料供給システムと、それによる悪影響を掘り下げている。

 食料供給と二酸化炭素排出の関係をめぐっては、肉消費を抑制すべきか否かで議論がある。IPCCは報告の要約で、この問題にほとんど触れなかったが、「植物性の食料」には利点があり、世界での二酸化炭素排出を軽減させる力があると強調した。(c)AFP/Patrick GALEY