【8月11日 東方新報】今年いっぱいで引退予定の台湾の著名舞踊家で名コリオグラファーの林懐民(Lin Hwai-min)氏が率いるコンテンポラリーダンスカンパニー「雲門舞集(Cloud Gate)」による「林懐民舞踊作品精選」が7月27日夜、台北(Taipei)の国家両庁院(National Theater & Concert Hall)芸文広場で無料上演された。夜のとばりに遠雷が時折ひらめく野外でのダンス公演に、約4万人の観衆は酷暑も忘れるほど魅了された。今年11月からは、台湾各地で引退公演が行われる予定。

 雲門舞集は、一年のうち100日は世界各国でツアー上演を行う国際的人気も高いダンスカンパニーだ。この日の上演はカンパニーとして2432回目の上演で、林氏が年末にカンパニーのアートディレクターを引退する前の最後の野外公演となった。今回の公演で、林氏は、カンパニーのベテランダンサーが最も得意とする作品をファンにささげる感謝と別れのあいさつとしてプログラムにした。

 周章佞(Chou Chang-ning)氏(団歴26年)の「行草-永字」「白水ソロ」、楊儀君(Yang I-chun)氏(団歴26年)の「家族合唱-白衣」、蔡銘元(Tsai Ming-yuan)氏(団歴20年)と黄佩華(Huang Pei-hua)氏(団歴19年)の「稲禾-花粉双人舞」など、人気ダンサーたちがダンスを披露するたびに、雷鳴のような拍手が巻き起こった。団歴25年以上のダンサーは、林氏とともに引退を表明しており、あるファンは「こんなに喜びと感傷に満ちた夜はない」と感情をあふれさせた。

 林氏は広場を埋め尽くすファンに向かって、「雲門の作品は私の理念であり構想です。この46年、ダンサーたちは汗と志と青春をもって、私の舞踊作品に血肉と魂を与えてくれました。彼らが私の舞踊作品のすべてであり、雲門のダンサーたちを本当に誇りに思います」とあいさつ。ファンは林氏やダンサーたちの引退を惜しみつつ、感謝と賛辞の拍手を送り続けた。

 林氏は「雲門舞集」を1973年に設立。台湾初のプロ舞踊団であり、中国圏初のコンテンポラリーダンスカンパニーとして、独特の存在感を放ってきた。林氏はアートディレクターとして、古典文学や民話、台湾の歴史や社会現象からインスピレーションを受けた舞踊作品を次々と発表。時代の変化の中で刺激を受け続けてきたという林氏の舞踊作品は、高い技量のダンサーたちの表現によって国際的にも高い評価を受けている。

 11月16日から台北のナショナルシアター、台中(Taichung)の台中メトロポリタンオペラハウス、高雄(Kaohsiung)の衛武営芸術文化センター、台南(Tainan)の台南文化センターなどで特別引退公演が予定されている。これまで生み出された作品の中で名作とされる90点あまりのうち「松煙」「水月」「行草」などの9作品から代表的な場面がプログラムに入るという。

 林氏は引退後について、「真面目に引退する。ゴロゴロするんだよ」と話している。(c)東方新報/AFPBB News