【8月7日 AFP】イングランドのサッカー界で、児童に対する性的虐待が広がっていた問題に関連して、外部の人間による調査レポートが5日に発表され、プレミアリーグの強豪チェルシー(Chelsea)の元スカウトが、所属する少年選手に「次々に手を出す、ずる賢い男」だったにもかかわらず、クラブがその状況を「見て見ぬふりをしていた」実態が報告された。

 英弁護士が中心になってまとめた報告書によれば、チェルシーでは元スカウト部長のエディー・ヒース(Eddie Heath)氏が、1970年代に10歳から17歳の少年を「好き放題に」虐待していた経緯が明かされた。ヒース氏は1983年に死亡している。

 被害者たちは、ヒース氏は更衣室で「性的なほのめかし」の言葉を口にし、「一番ひどい性的暴行は、二人きりのときに行われた」と回想。そうした行いは選手と職員の間では公然の秘密で、ある被害者は「みんな、大勢でいるのが安全だと分かっていた。車に最後まで残るのを誰もが嫌がった。体をまさぐられたり、尻をたたかれたりしかねないからだ。あいつは『悪夢のエディー』と呼ばれていた」と話している。

 レポートの発表を受けてチェルシーも発表文を出し、「ヒース氏が子どもに次々手を出す危険な男」で、その行為は「不届きという言葉では到底足りない」ものだったと認めつつ、「クラブは生まれ変わりました。今後は過去の行いの責任をしっかり取っていきます」と続けた。現在は契約する保険会社を通じて、賠償請求に対応しているところだという。

 ヒース氏は、W杯でイングランド代表を優勝に導いた国民の英雄、ジェフ・ハースト(Geoff Hurst)氏がトップチームのコーチングスタッフに就任した1979年に解雇されたが、現在77歳となったハースト氏は、ヒース氏の行為は把握していなかったと話し、レポートの内容に関する取材には応じない姿勢を見せている。

 調査チームは、ヒース氏の被害に遭った23人の人物から話を聞き、「大胆かつずる賢くリスクを犯す男」というヒース氏の人物像を描き出した。

 ある被害者は、所属選手や職員が「彼の行動を知っていたか、行動に疑いを持っていたにもかかわらず、見て見ぬふりをした」と証言。トイレで用を足しているところをヒース氏に見られたり、ブースでシャワーを浴びているところを外からのぞかれたりした元選手もいたという。

 またヒース氏は、「お気に入り」の選手をほめちぎり、一緒にサッカーの試合を見ようと自宅へ招き、小遣いやお菓子を渡し、両親と仲良くなっていた。多くの被害者は、警察に話してヒース氏を困らせるのが怖かったと話す一方、チェルシーに残るため、「彼に自分をアピールしたかった」と話す被害者もいたという。(c)AFP