【8月6日 AFP】(更新、写真追加)米黒人女性で初のノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)受賞者で、米国民に最も愛された作家の一人であるトニ・モリスン(Toni Morrison)氏が、短期間の病気の末に死去した。88歳だった。遺族が6日、明らかにした。

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 遺族によると、モリスン氏は5日、ニューヨークの病院で家族や友人に囲まれて安らかに息を引き取った。遺族は「彼女の死はとてつもない喪失を意味するが、私たちは彼女が長く善き人生を送ったことに感謝している」とのコメントを発表した。

 訃報を受け、モリスン氏の死を悼む声が次々と上がっている。同氏に大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)を授与したバラク・オバマ(Barack Obama)前大統領は、モリスン氏を「国宝であり、実際の人柄もページ上と同じく語り上手で、魅力的だった」と評した。

 モリスン氏は小説11作品を執筆し、60年以上にわたる作家人生で数々の賞を受賞。作品の多くはアフリカ系米国人としての経験を題材にしている。また数々のエッセーや詩、スピーチも執筆、現代の重大な政治問題にも物おじせずコメントし、人種や人権についての鋭いメッセージを発信し続けたことから、しばしば米国の「良心」と呼ばれた。

 1987年には、1860年代の南北戦争(American Civil War)後を舞台に奴隷州ケンタッキーから自由州オハイオへと逃れた奴隷の物語を描いた小説「ビラヴド(Beloved)」を発表し、翌年にピュリツァー賞(Pulitzer Prize)と米国図書賞(American Book Award)を受賞。1993年にノーベル文学賞を受賞した。(c)AFP