【8月7日 東方新報】米国との緊張が高まっているイランと中国が、互いに接近を図っている。核合意をめぐり米国から経済制裁を受けているイラク、米国との果てしない貿易摩擦が続く中国――超大国による圧力が、両国の関係を強化させる形となっている。

 イラン政府は7月末、中国人の21日以内のイラン滞在についてビザ(査証)を免除すると発表した。イラン人が中国を訪問するには今後もビザが必要で、一方的な緩和措置となる。米国による制裁でイラン経済がダメージを受ける中、個人消費が旺盛で海外旅行熱が高い中国人観光客を呼び込む狙いだ。

 両国の接近は、今年に入って顕著になっている。

 イランのモハンマドジャバド・ザリフ(Mohammad Javad Zarif)外相は、2月と5月に相次いで中国を訪問。中国の王毅(Wang Yi)外相との会談では、米国による一方的な核合意離脱やイラン制裁に反対し、国益を守るイランの取り組みを中国が支援することを約束した。

 中国からは共産党中央委員会対外連絡部の宋涛(Song Tao)部長が党代表団を率いて7月28日から30日、イランを訪問。アリ・ラリジャニ(Ali Larijani)国会議長やエスハク・ジャハンギリ(Eshaq Jahangiri)副大統領らとの面会で「イラン核合意を断固として擁護し、多国間主義を守る」と強調し、米国をけん制した。

 中国はイラン産原油の最大の輸入国だ。中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路(Belt and Road)」においても、イランは要衝に位置する。中国とロシア主導の上海協力機構(SCO)にイランが正式加盟することも歓迎している。

 米国は5月以降、イラン産原油の禁輸措置について、中国や日本などに対する適用除外措置を打ち切った。イラン産原油を輸入すれば米国の制裁対象となる。中国の輸入は公式統計上では激減したが、第三国を経由してイラン産原油を確保し、非公式にイランを側面支援しているという見方もある。

 圧力一辺倒で自国の主張を押し付ける米国と、それに屈しようとしない中国とイラン。中国古代の「三国志」の世界のような外交が今後も続きそうだ。(c)東方新報/AFPBB News