■「地球上で入手可能な水の中で最も純度が高く、清潔」を売りに

 キーンさんの得意先企業であるダイナプロ(Dyna Pro)は、ボトル詰めした流氷の水を1本16カナダ・ドル(約1300円)で販売している。ターゲットは富裕層だが、国外での販路拡大を目指しているという。

 同社のケリー・チョーク(Kerry Chaulk)氏は、「現在、欧州やシンガポール、ドバイといった国外へも流氷を輸出している。わが社が成長できたのもおそらくそのおかげだ」と話す。

 カナダの観光地、トウィリンゲート(Twillingate)にあるオークアイランド・ワイナリー(Auk Island Winery)では、野生のベリー類と流氷を原料としたワインを製造し、1本10~90カナダ・ドル(約800~7200円)で販売している。

「流氷を使用しているのは、地球上で入手可能な水の中で最も純度が高く、清潔だから」「流氷を使用した商品はどれも、非常にキレがあり、ピュアな味わいがあります」と同社スタッフは話す。

 流氷の商品化に成功したとはいえ、キーンさんの船の乗組員は相変わらず少人数で、氷山を確保する道具も数十年来ほとんど変わっていない。

「こういう仕事は、もう誰も手作業でしたがらない」「できれば、あと数年はこのまま仕事を続けたい。でも私も60歳だから、時間は限られている」と、キーンさんは語った。(c)AFP/Julien BESSET