【8月12日 AFP】カナダ人のエドワード・キーン(Edward Kean)さん(60)は、20年以上もの間、北大西洋に浮かぶ巨大な流氷の塊を船で岸まで運び、流氷が解けてできた水を地元企業に販売してきた。その水は、ボトル詰めされてアルコール飲料や化粧品の原料として使用されるため、高額で買い取ってもらえるという。

 地球温暖化に伴い、事業は絶好調だ。北極圏では、他の地域の3倍の速さで温暖化が進んでいると専門家らは指摘する。南下する流氷の数も増加傾向にある。

 だが、仕事はかなりきつい。毎日が多忙で、「収穫」も容易ではない。取材に訪れた日、船長のキーンさんは、衛星地図を使って探し出したという流氷の「獲物」を手に入れるため、約24キロの航海に出発した。

 大西洋に面したボナビスタ湾(Bonavista Bay)にそびえ立つ巨大な流氷の近くに到着すると、キーンさんは、流氷に向かってもりを撃ち込んだ。

 発射音が立て続けに3回響き渡り、辺りの空気がわずかに震えた。乗組員たちは固唾をのんで見守るが、流氷が真っ二つに割れることはない。

 夏になると、流氷の採取は時間との闘いだ。

「流氷はこの辺りまで来ると、あっという間に解けていく」と、キーンさんは話す。流氷がカナダ最東部ニューファンドランド(Newfoundland)島沖に現れたときには、まさに時間との競争になる。

 乗組員2人がモーターボートに乗り、流氷の周囲を回ったり触ったりしながら、近くに小さな塊が浮いていないか探した。

 貴重な塊を見つけたら、ポールを使ってネットをかぶせる。塊一つの重さは、1~2トンにもなるという。それを漁船の甲板に載せたクレーン車のフックに結び付け、船の上に引き上げる。キーンさんはその塊をおので割り、1000リットルのコンテナに入れ、数日かけて解けるのを待つ。

 5~7月の繁忙期には、80万リットルもの水が採取でき、1リットル当たり1ドル(約105円)で地元企業に販売する。