【8月6日 AFP】カメの一部の種類は卵の温度によって雌雄が決まるが、こうした温度依存性のせいで気候変動の影響を受けて絶滅してしまうのではないかとこれまで懸念されてきた。だがこのほど、中国とオーストラリアの研究チームは、カメの胚は卵の中を動き回って生命誕生に適した環境「ゴルディロックス・ゾーン(Goldilocks Zone)」を見つけ出し、自身の性別決定に影響を与えていることを発見した。

 今月1日の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された研究チームの論文によると、この仕組みにより、気候変動に対する進化の緩衝作用がもたらされ、カメは古代の地球で起きた激しい変動を切り抜けられた可能性があるという。

 論文の共同執筆者で、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の杜衛国(Wei-Guo Du)教授は、AFPの取材に「(カメが属している)爬虫(はちゅう)類の胚は地球温暖化の受動的被害者ではなく、自身の性決定をある程度まで制御している可能性があることを今回の研究は示している」と語った。

 爬虫類の胚が温度調節のために卵の内部で動き回る可能性があることを実証した研究チームは、この行動が性別を決定するほどの大きな影響を及ぼすかどうかを明らかにするため、淡水カメの卵を実験室条件と池のさまざまな温度下で人工ふ化させ、単独の胚が卵内部で最大4.7度の温度変化を経験する可能性があることを突き止めた。

 カメの多くの種では、温度変化が2度を上回ると性比が劇的に変化し、温度が高くなるほど性比が雌に偏る可能性がある。

 研究チームは卵を半数ずつのグループに分け、一方にのみ、温度センサーを阻害する化学物質カプサゼピンを適用した。その結果、温度調節を阻害した胚のグループは、ふ化温度に応じてほぼすべてが雄、あるいは雌になることが分かった。一方、温度変化に反応できる胚は卵内部で位置を変える行動を示し、性比はほぼ均等だった。

 しかし、胚が自身の性別を制御する能力には限界がある。巣の中の平均温度が非常に高かったり非常に低かったりすると、胚の行動は性別決定には全く影響を及ぼさなかった。

「(胚の行動だけでは)人的活動によって現在引き起こされている非常に急激な気候変動から種を守るのには不十分かもしれない」と、杜教授はAFPに指摘。

 だが、カメが産卵シーズンの早期に卵を生んだり、日陰の多い巣の中に産卵したりするなど、リスクを相殺するために取っている手段でまだ見つかっていないものがあるかもしれないとして、これらは今後の研究の重点項目となると述べた。(c)AFP