【8月1日 Xinhua News】中国の上海美術映画製作所が1979年に製作したアニメ映画「ナーザの大暴れ」(原題:哪吒鬧海)は、他にはない民族スタイルで多くの中国人の子ども時代の記憶に刻み込まれており、中国アニメ映画の最高峰を極めたとされる。

 40年後の夏、同じ主人公ナーザの物語を描いた「哪吒之魔童降世」(英語題:Ne Zha)が中国国内で公開され、初日の1時間半で興行収入が1億元(1元=約16円)を突破、さらに30時間で3億元を突破した。今、「中国国産アニメ」が再び大きな話題になっている。

 この作品は非常に変化に富む物語で、仙人の太乙真人は神様の命を受け、「霊珠」を陳塘関に住む李靖(Li Jing)の息子のナーザに託す。だがふとした間違いから人に転生し人々を助け殷王朝最後の紂王を倒すべき「霊珠」と、魔王として生まれる「魔丸」がすり替わり、本来なら「霊珠」の英雄となるはずだったナーザは誕生の日に世を混乱に陥れる「魔王」になってしまった。人々の誤解に対して、ナーザは世間の偏見通りの「魔童」から、運命と粘り強く闘う小さな英雄へと成長する。

 北京の映画館で作品を見終わったばかりの肖峰(Xiao Feng)さんは「笑いが絶えず、予想を超えていた。心を打つ、あらゆる年代の観客に愛される国産アニメの力作だ」との感想を述べた。

 2016年の大ヒットアニメ映画「紅き大魚の伝説」(原題:大魚海棠)の梁旋(Liang Xuan)監督は、原作に対する大きな改編は完全に期待以上で、観客からの高い評価にふさわしいと評した。

 「哪吒之魔童降世」の「餃子(ぎょうざ)」監督は、「ナーザのキャラクターデザインだけで100以上あり、顔の細部も1000カ所以上調整した」と紹介。映画の脚本のブラッシュアップに2年をかけ、66回の脚本修正を行った。製作には1600人以上のスタッフが関わり、3年の歳月をかけて完成したと語り、当初は全部で5000カット程度の予定だったが、入念に選別した結果2000カット弱となった。2000カットのうち、特殊効果の部分は80%を占めたと説明。

 「餃子」監督は、「ナーザは中国の伝統的神話の中の人物だが、見る人の年代によってこの映画から精神的に受けるものは異なる」と話す。今回の作品中のナーザの最も際立った特徴は「運命と諦めず、先入観を打ち破る」信念と、「自分の運命は自分が決める」「粘り強く闘う」精神だという。

 ある関係者は取材に対し、その中心的価値は「中国らしさ」であり、それが多くの若者を引きつけたと語った。

 監督は「現実において、多くの若者も行動により外界の制約を突破し、先入観を打ち破り、勇敢に生まれ変わっている。ナーザには積極的に夢を追い求める若者たちの姿が反映されている」と語り、これが同作品の出発点だと話した。

 今回の改編では、李靖夫婦の「魔童」に対する理解と包容によって、ナーザは世間の人の偏見に対する態度を変えていく。これがナーザが「自分の運命は天ではなく自分が決める」ことを堅持した主な理由だ。そこには現代の親子関係に対する考えと監督自身の経験が溶け込んでいる。どれだけ仕事が忙しくてもできるだけ子どものそばにいる母親の殷(いん)夫人と、口下手だが子どものために命をささげようとする父親の李靖は、中国の両親の縮図となっている。

 一部の映画評論家は、「中国国産アニメ」は耽美を誇張した画風の積み重ねで歩みを止めるべきでなく、装飾的図案や、各シーンのデザインなど表面的に「中国風」なだけではならないとし、中国の漫画・アニメ独特のスタイルや特色、精神的な核となる内容を持つべきだと主張している。(c)Xinhua News/AFPBB News