【8月2日 Xinhua News】2018年、中国の生鮮食品電子商取引(EC)市場規模は2000億元(1元=約16円)を超えた。今後3年は年平均35%の成長を続ける見通し。ただ生鮮食品EC企業は急成長しているものの、苦戦を強いられ、88%は赤字の泥沼に陥り、一部は閉店寸前に追い込まれている。経済参考報が伝えた。

 食品通販サイト「本来生活網」の喩華峰(Yu Huafeng)最高経営責任者(CEO)は創設7周年戦略発表会で、2020年3月期第1四半期(19年4~6月)は利益を実現した。2021年度も通年で利益を達成する見通しだと語った。B2C(企業対消費者)生鮮食品ECを中国で早くから始めた代表的プラットフォームである本来生活網は創業7年で黒字を実現した。これは業界でもなかなかない成果と言える。

 生鮮食品ECは急成長の勢いを見せている。データによると、中国生鮮食品市場の取引規模は2018年に2000億元を突破した。2018~20年の各年の伸び率は41.2%、39.9%、36.3%の見通し。市場規模は2022年には7054億2000万元に達するとみられ、伸び代は非常に大きい。

 しかし、生鮮食品EC企業の成長は決して順風満帆というわけではなく、業界全体が大波にもまれている。中国電子商取引研究センターのデータによると、中国の生鮮食品EC分野には現在、約4000社の企業があり、うちわずか4%が横ばいの売上高を保ち、88%は赤字を計上し、利益を上げたのは1%にとどまった。中国ネット出前サービス大手の美団点評(Meituan Dianping)が発表した2018年12月期決算でも、傘下の「小象生鮮」は直接収入をもたらしていない。スーパーマーケットの永輝超市の2018年12月期決算によると、傘下の「超級物種」の親会社である永輝雲創の売り上げは21億4600万元、赤字は9億4500万元だった。

 生鮮食品ECの出店も減速している。超級物種は北京市や上海市、広東省(Guangdong)の広州市(Guangzhou)と深圳市(Shenzhen)、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)、江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)など10余りの大都市に広がり、2018年だけで53店が出店された。だが今年に入って拡大ペースは明らかに鈍り、上半期の全国の出店数は10店余りにとどまった。さらに一部は閉店の危機にさらされている。7月4日には超級物種の上海一号店である五角場万達店が2017年11月の開業から2年足らずで閉店した。超級物種の店舗の閉店は初めて。

 その前にも中国EC大手・アリババグループ(Alibaba Group)傘下の「盒馬鮮生」が、昆山新城吾悦広場店の営業を2019年5月31日に停止すると発表した。美団点評傘下の小象生鮮は今年5月末までに江蘇省の常州市(Changzhou)や無錫市(Wuxi)などの5店舗を閉店した。同社は決算で、利益率が予想を下回ったことから1~3月期に小都市での閉店を決定したとし、今後は北京市に残る2店舗での模索に専念するとしている。

 業界関係者によると、生鮮食品ECはここ2年、資本の高い注目を受け、EC大手も参戦して急ピッチで成長してきた。だが生鮮食品ECは物流や運営のコストが高く、一部中小企業は破綻や合併・買収(M&A)を迫られている。

 厦門大学厦門(アモイ)大学(Xiamen University)経済学院の孫伝旺(Sun Chuanwang)副教授は、生鮮食品ECは長い間、規模とアクセスで勝負する段階にとどまっている。供給のハードルが低く、需要は相対的に安定しているため、業界競争は特に激しい。しかも物流費と鮮度低下によるロスが大きいため、莫大(ばくだい)な投資が欠かせないと指摘した。

 「貨幣を燃やす」と例えられた莫大な投資は生鮮食品ECの大きな特徴の一つ。中国電子商取引研究センターの大まかな統計によると、2018年、中国の生鮮食品EC企業22社は計120億元の資金を調達した。市場リサーチ機関の艾媒諮詢が発表した「2019年中国生鮮食品EC業界ビジネスモデル・ユーザー画像分析報告」によると、今年1~3月、生鮮食品EC企業への融資は13件の計3億9000万元にのぼった。

 中国財政科学研究院の博士研究員(ポスドク)で応用経済学が専門の盤和林(Pan Helin)氏は、生鮮食品EC企業の88%は赤字を計上している。莫大な資金を調達して投入する経営モデルは初期の市場争奪や消費者習慣の養成などの市場競争も原因だが、商品の同質化は深刻で、ブランドの付加価値が高くない。そのため、コストや利益は物流配送の競争力にかかると言えるとの認識を示した。

 盤氏によると、生鮮食品EC企業の課題はコールドチェーン物流にかかわる。まず、コールドチェーン物流の設備とそれによって形成されるネットワークは整備が進んでおらず、効率の向上が難しい。さらに、生鮮食品EC企業の業務部門と物流配送企業とのつながりが円滑でないという問題もある。

 多くの生鮮食品EC企業が商品とサービスの質をめぐる問題を指摘されている。杭州市市場監督管理局と同市消費者権益保護委員会は食品購入アプリ関連企業を呼んで責任相談会を開き、一部生鮮食品EC企業に対し、商品の重量不足や環境に悪い包装などの問題を自らで調べ、正し、主体責任を確実に履行するよう求めた。

 専門家は、生鮮食品EC企業の管理の不行き届きは、無計画な拡大が招いたずさんな品質管理、アフターサービスの遅れも原因だと指摘した。(c)Xinhua News/AFPBB News