【7月31日 AFP】陸上女子中距離のキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)が、9月に開幕する世界陸上ドーハ大会(IAAF World Championships in Athletics Doha)を欠場することを代理人を通じて発表した。スイスの連邦裁判所が、国際陸上競技連盟(IAAF)のテストステロン(testosterone)値に関する制限規定について、適用を一時停止する仮命令を撤回したことが理由だという。

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 IAAFの新規定では、男性ホルモン値が基準より高い「高アンドロゲン」の女子選手が400メートルから1マイル(約1600メートル)の種目に参加するためには、体内のテストステロン値を人為的に下げなければならないとされている。

 IAAFの規定適用が停止されている間、セメンヤは6月に大会に出場していたが、これにより治療を受けなければ対象種目には出場できなくなった。今年の世界陸上で女子800メートルの連覇が懸かっていたセメンヤは、五輪でも2大会連続で金メダルを獲得している。ドーハ大会は9月28日から10月6日の日程で行われる。

 セメンヤは発表の中で、「苦労して勝ち取ったタイトルの防衛に挑戦できなくなったことはとても残念だが、だからと言って、この件に関わるすべての女子アスリートの人権を守る闘いをやめるつもりはない」と話した。

 発表では、「判事の一人が、CASの裁定に対するキャスターの異議申し立ての結果が出るまで、IAAFの規定の適用を停止するという以前の決定を覆した」「最高裁判所は、CASの裁定を一時的に停止するには、厳格な条件と高い基準を満たさなければならない点を強調し、今回はその条件を満たしていないと判断した」と述べられている。

 一方でセメンヤの担当弁護士は、「キャスターの異議と、基本的人権を守るための闘いはこれからも続いていく。レースはいつだって、ゴールラインを切るまで分からないもの」と続けている。

 女性として育てられ、女子選手として大会に出場しているセメンヤだが、IAAFは「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」に伴って明らかに男性的な特徴を持つ選手を、生物学的には男性に分類。「女子選手にとって公平な大会」を目指す上で、セメンヤのように男性レベルのテストステロン値を持つ選手が有利になっていると主張し、南アフリカの関係者から猛反発を受けている。(c)AFP