【8月6日 AFP】この話をずっと前から記事にしたいと思っていた。万里の長城(Great Wall)は中国の象徴的建造物であり、この国に赴任したからにはこれについて一言も書かないわけにはいかない。しかも、この歴史的建造物の一部が崩れ、修復が行われているとなれば、記事のネタとしてこれ以上のものはないだろう。

中国・北京市懐柔区にある万里の長城の修復現場を調べる作業員(2019年5月17日撮影)。(c)AFP / Fred Dufour

 5年前にこの国に赴任して以来、万里の長城を訪れたことは何度かある。だが多くの場合、観光客に開放されている場所にしか立ち入ることができなかった。だが今回訪ねることができたのは本道から外れた場所で、修復工事を間近で見ることもできた。

 中国で記者として働いていると、大きな困難に直面することがよくある。何かにつけて許可を得なければならず、当局に厳しく監視されるからだ。だが時々、別の国だったら拒否されそうな場所への立ち入りが許されることもある。この種の修復工事が別の場所で行われていたとしたら、少し離れた場所で取材しなければならなかっただろう。だが、この国の安全基準はもう少し緩いため、作業員らのすぐ近くまで行くことができた。

中国・北京市懐柔区にある万里の長城の修復現場で石を切り出す作業員(2019年5月17日撮影)。(c)AFP / Fred Dufour
中国・北京市懐柔区にある万里の長城の修復現場で石を積み上げる作業員(2019年5月17日撮影)。(c)AFP / Fred Dufour

 私たちは、早朝に出発した。すると、まず驚かされることがあった。万里の長城に到達することがこれほど大変だとは思ってもみなかった。私たちは用具や機材を携行しており、その姿は修復工事に使う石を運ぶロバとさほど変わらない。私たちはそうやって1.5キロの狭い小道を重い足取りで上った。私たちがここを上らなくてはならないのは少なくとも1回きりだが、作業員たちにとっては毎朝のことなのだ。

中国・北京市懐柔区にある万里の長城に向かうラバを連れた男性(2019年5月17日撮影)。(c)AFP / Fred Dufour

 重機の騒音や作業員らの怒鳴り声が飛び交う建設現場のような場所が待ち受けているのだと思っていた。だが実際は全く違った。数人の作業員が黙々と仕事をしていた。男性が、時々大声を出してラバを奮い立たせながら小道を上って行く。しかし、小道の上は見慣れた職場の風景だった。作業員たちは皆、幸せそうでも不幸せそうでもなく、私たちがそこにいることなど気にも留めずにただ忙しく立ち働いていた。私たちに一瞬、目を向けたかと思うと、再び作業に没頭した。

中国・北京市懐柔区にある万里の長城の修復現場で食事を取る作業員(2019年5月17日撮影)。(c)Fred DUFOUR / AFP
中国・北京市懐柔区にある万里の長城の修復現場を歩く作業員(2019年5月17日撮影)。(c)Fred DUFOUR / AFP

 だが、私にとってはまさに理想的だった。修復現場のありのままの様子をカメラに収めることができたのだから。

このコラムは、AFP北京支局のフレッド・ドゥフール(Fred Dufour)カメラマンが、AFPパリ本社のヤナ・ドゥルギ(Yana Dlugy)記者とともに執筆し、2019年7月24日に配信された英文記事を日本語に翻訳したものです。