【7月30日 AFP】北極圏のノルウェー領スバルバル諸島(Svalbard Islands)でトナカイ約200頭が餓死しているのが見つかった。ノルウェー北極研究所(Norwegian Polar Institute)が29日、明らかにした。この異常な大量死を引き起こしたのは気候変動だと、北極研究所は指摘している。

 北極研究所の研究者ら3人は、北極海に浮かぶスバルバル諸島に生息する野生のトナカイの年次個体数調査を実施中に、昨冬に餓死したとみられるトナカイの死骸約200体を発見した。スバルバル諸島は北極点(North Pole)から約1200キロに位置する。

 調査を率いたアシルド・オンビク・ペデルセン(Ashild Onvik Pedersen)氏は、この「高い餓死率」について、気候変動がもたらした結果だと指摘する。気象学者らによれば、北極圏では世界の他の地域より2倍速いペースで気候変動が進行しているという。

 オンビク・ペデルセン氏は、AFPの取材に「気候変動によって降雨量は著しく増加している。積雪の上に降り注ぐ雨はツンドラ(凍土帯)の上に氷の層を形成するため、地表の植物を餌とする動物にとっては採餌条件が非常に悪くなる」と語った。

 冬の間、スバルバル諸島のトナカイは、ひづめを使って雪の下にある植物を見つけるが、凍結期と融解期が交互に繰り返されて頑強な氷の層が形成されることで、トナカイが栄養を摂取できなくなってしまう。

 オンビク・ペデルセン氏によると、40年前にトナカイの個体数調査が開始されてから、同じような死骸の数が記録されたのは2007年から2008年にかけての冬季後の1回だけだという。

 スバルバル諸島におけるトナカイ個体数の著しい増加も餓死率上昇の要因の一つとなった。個体数増加の理由の一つは、気候変動と夏季の気温上昇だ。これは同じ採餌エリア内での競争の劇化を意味する。

 ノルウェー北極研究所によると、1980年代以降、スバルバル諸島のトナカイの個体数は倍増しており、現在は2万2000頭に達しているという。(c)AFP