【7月29日 AFP】ルーマニアで、誘拐された15歳の少女から助けを求める電話が3回もあったにもかかわらず警察の対応が遅れ、少女が拘束されていた家で「遺骨」が見つかった事件で、拘束された男が、この少女を含む10代の少女2人を殺害していたことを認めた。男の弁護人が28日、明らかにした。この事件はルーマニア全土で激しい怒りを呼び、責任を問われた警察トップが解任されている。

 国営アジェルプレス(Agerpres)通信によると、犯行を認めたのはゲオルゲ・ディンカ(Gheorghe Dinca)容疑者(65)。当初は黙秘していたディンカ容疑者だったが、今月24日に誘拐された15歳のアレクサンドラという名前の少女と、4月から行方不明になっていた19歳のルイザという名前の少女を殺害したことを認めた。

 アレクサンドラさんは24日、ルーマニア南部のドブロスロベニ(Dobrosloveni)でヒッチハイクをして自宅に帰ろうとしたところ、ディンカ容疑者に車に乗せられ、誘拐された。

 25日朝、アレクサンドラさんは何とか緊急電話番号112に3回電話をかけ、拘束されている場所の手掛かりを警察に伝えた。しかし、アレクサンドラさんが捕らわれていた家を警察が捜索したのは、最後の電話から19時間も後のことだった。

 検察によると、ディンカ容疑者はアレクサンドラさんを誘拐した後、レイプして殺害した疑いが持たれている。アレクサンドラさんは、25日に電話をかけた直後に殺害されたとみられるという。

 ルーマニアではこの事件に激しい抗議の声が上がった。ニコラエ・モガ(Nicolae Moga)内相は26日夜、ルーマニアの警察トップを解任したと発表した。他にも4人が辞任に追い込まれた。

 27日夕には首都ブカレストの内務省前に数千人が集まり、花とろうそくを供えて殺害された少女を追悼した。集まった人たちは「暗殺者」「無能」などと叫び、ビオリカ・ダンチラ(Viorica Dancila)首相と内閣の退陣を要求した。

 ルーマニアではダンチラ首相の改革によって刑事司法制度が弱体化したとの批判が出ている。欧州連合(EU)も同様の批判をしている。

 政府を批判する向きは、当局が批判を真剣に受け止めなかったことが、今回の事件での警察の対応の遅れにつながり、少女らを助けることができなかったと主張している。

 ルイザさんは3か月前、アレクサンドラさんと同じ地域、同じような状況で失踪していた。ルイザさんの両親も、適切に対処しなかったとして警察を批判した。4月に通報した際、ある当局者は、ルイザさんは「チャーミングな王子様」と駆け落ちしたのではないかといったことを話したという。

 映像は、アレクサンドラさんを追悼するデモ。27日撮影。(c)AFP