■過去5年でISから解放されたヤジディー教徒のうち男性はわずか10%

 戦争は、世界中で何世紀にもわたって、共同体から働き盛りの男性たちを奪ってきた。その空白を埋めるために女性たちが立ち上がってきた。

 これまでの役割からの逆転は、ヤジディーのように保守的で小さな共同体では特に際立つ。「以前のシンジャルでは、女性が職を得ることは恥だった。けれど今では逆。男性よりも女性の方が働いている」と話すのは、避難民キャンプで暮らすメーキャップアーティストのアシマさん(30)だ。

 2014年に故郷がISに攻撃された際、アシマさんの家族は2週間近く、シンジャル山(Mount Sinjar)に逃れ、野外で寝起きして過ごし、安全を確保して山を下りた。以来、アシマさんはカンケで暮らしている。

 ISから逃れた人々の支援を行っている地元NGO、ジンダ基金(Jinda Foundation)の支援によって、アシマさんはキャンプ内で2か月前に美容院を開業した。必要な美容製品は、このNGOが供給してくれる。

 2014年以前には55万人いたイラクのヤジディー教徒のうち、約10万人が他国に移住し、約36万人が国内で避難生活を送っている。

 過去5年間でISから解放されたヤジディー教徒、約3300人のうち男性はわずか10%。残る大半は、ISに「性奴隷」とされていた女性や少女たちだ。

 閉鎖的なヤジディー社会は、共同体の外で婚姻関係を持ったと見なして、彼女たちを受け入れなかった。しかし、2015年にヤジディー教の宗教指導者ババ・シェイク(Baba Sheikh)師が、被害女性らの帰郷を歓迎するよう教徒らに求めた経緯がある。(c)AFP/Maya Gebeily