【7月26日 AFP】背中や腕にくっきりと、縦横に走る無数の赤いあざ──香港北西部・元朗(Yuen Long)区の鉄道駅で犯罪組織「三合会(Triad)」の構成員とみられる集団が民主派のデモ参加者らを襲撃した事件で、デモに参加していないのに襲われた男性が24日、恐怖の一部始終をAFPに語った。

 被害に遭ったカルビン・ソー(Calvin So)さん(23)は飲食店の料理人で、その日は仕事を終えて帰宅する途中、駅でデモ参加者らを追い立てる覆面集団に出くわしたという。

 21日夜に起きたこの事件では、45人が負傷した。病院によると、25日現在も1人が重体、1人が重傷だ。事件を受け、2か月近くにわたって反政府デモが続く香港では、暴力的な弾圧への懸念が高まっている。

「彼らはまず私を脅し、取り囲んだ。それから1人が私を殴った」と、ソーさんは入院中の病院でAFPの取材に語った。自分はデモの参加者ではないと言ったが、男たちは容赦なく襲いかかってきたという。

「誤解されていると思った」とソーさん。当時は灰色のTシャツを着て、料理人が厨房で履くことの多いゴム製のボートシューズを履いていた。「私は仕事を終えたばかりで、まだ仕事靴を履いている、あなたたちの標的ではないと言ったんだ」

 しかし、民主派のデモ参加者が好んで着る黒いシャツ姿ではなかったにもかかわらず、ソーさんはあっという間に地面に押さえ込まれ、棒やつえでめった打ちにされた。やめてくれと頼む声は、無視された。

 取材中、けがの痕を見せようとシャツを脱いだソーさんの背中には、赤くなったみみず腫れやあざが幾つも残っていた。襲われた当夜は、痛くて眠れなかったという。

 自らの政治的な意見や主張については話したくないと言いつつ、ソーさんはギャング集団が処罰されることなくあのような暴力を振るうことができるのは震え上がるほど恐ろしいと断言。「警察への信頼感は、ぐっと下がった」と述べた。今後は通勤経路を変えるつもりだという。

 この襲撃事件では、警察の対応が遅すぎたとして、香港の警察当局と親中派の林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官に対する批判が高まっている。警察は23日、今回の襲撃に絡み、三合会とのつながりが疑われる人物など男11人を逮捕したと発表した。

 元朗区は中国に近く、犯罪組織や中国政府に忠実な地域委員会が強い影響力を持っている。2014年の民主派の大規模デモ、雨傘運動(Umbrella Movemen)の際にも親中派の自警団によるデモ参加者の襲撃が起きており、これも三合会の仕業だと非難されていた。(c)AFP/Yan ZHAO