■海岸線の浸食

 人工半島から約12キロ東方に土地を所有するワシウ・エレグシ(Wasiu Elegushi)さんは、「エコアトランティック」が沿岸の海流に破壊的な変化をもたらし、中所得者層が住む小規模地区アルファビーチ(Alpha Beach)は壊滅的な打撃を受けていると訴える

 地元住民や専門家らによると、2007年に建設が始まってからは潮の流れが変わり、海岸線が25メートル以上浸食されているという。「エコ(アトランティック)の前は、ヤシの木やココナツの木があった」「海面の上昇によって、あらゆるものが押し流されてしまった」とエレグシさんは説明した。

 アルファビーチの海岸沿いの道路は波の下に消え、わずか10年前には窓の外に広がる美しいオーシャンビューを売りにしていた集合住宅は、今や不法占拠者の家と化した。

 AFPはエコアトランティック側に建設プロジェクトの影響について質問を投げかけたが、これまでのところ回答は得られていない。

■巨大都市の大問題

 エコアトランティックについて専門家らは、アフリカ最大の都市ラゴスに大規模な埋立地を造成したことによる影響が最も顕著に表れた例だと話す。

 正確な数は不明だが、人口2000万人以上とされるラゴスは世界で最も急速に発展している都市の一つだ。その急な発展の中で起きた予期せぬことの一つは、コンクリートの原料となる砂を調達するためのしゅんせつ工事により、海底の一部が月面のようになってしまったことだ。

 AFPが入手した、ラゴスと周辺地域への影響を調べた研究結果によると、かつては滑らかだった海底には今、深さ8メートルの巨大な穴がいくつもでき、その一部は危険なほど海岸に近いという。専門家らは、こうした穴が沿岸地区にある家屋の安全性を脅かす恐れがあり、また海沿いの一部貧困地域では建物が倒壊するなど、すでに影響は出ていると指摘している。

 アルファビーチ周辺に住む人々の表情はさえない。

 ビーチで飲み物やスナックを売っているというボビーさんは、「ここに土地を持っていても誰も家を建てようとは思わない。不安だからね」と話し、「商売もあがったりだ」と力なくつぶやいた。(c)AFP/Emmanuel Akinwotu