【7月26日 AFP】現在開催されている第18回世界水泳選手権(18th FINA World Championships)で、新たなドーピング疑惑の渦中にいる中国競泳男子の孫楊(Yang Sun、ソン・ヨウ)にライバル選手らが抗議行動をとっていることについて、同国のヘッドコーチは「有害」で「偏見的」なものと批判している。

 五輪で3個の金メダルに輝く孫は、国際水泳連盟(FINA)のドーピングパネルの報告書が外部に漏れ、2018年の抜き打ち検査で血液サンプルを金づちで破壊した疑惑が持たれている。

 そのことからオーストラリアのマック・ホートン(Mack Horton)と英国のダンカン・スコット(Duncan Scott)は、各レースの表彰式において一緒の記念撮影を拒否する抗議行動に出るなどして孫を激高させたが、一部のトップ選手からはこれらの行為を支持する声が上がっている。

 一方、中国代表のコーチは24日、「一部の人間が臆測やうわさで無実の一流アスリートを公然と冒涜(ぼうとく)するのは、信じ難いことであり受け入れられない」「これは偏見的で理不尽であり、競泳競技や当該アスリートに大きな害をもたらすものである」と報道陣に訴え、孫を擁護した。

 21日に行われた男子400メートル自由形決勝で、銀メダルを獲得したホートンは金メダルの孫と表彰式で一緒に壇上に上がることを拒否し、両者の舌戦を再燃させた。ホートンは2016年リオデジャネイロ五輪でも、孫が心臓病の治療薬と称して興奮剤を摂取して3か月間の出場停止処分を受けたことに言及し、「薬物違反者の出る幕じゃない」と攻撃していた。

 孫は男子400メートル自由形で大会連覇を果たした際、ホートンが無言の抗議をしたことに対して、「中国を軽視している」と反発。こうした激しい言葉が飛び交う中で、ホートンに対しては、中国の国営メディアが「西側の二流市民」「白人優越主義者」と批判したり「道化師」と呼んだりしている一方で、同選手のSNSアカウントには、トロール(ネットの荒らし屋)が死の脅迫状を書き込んでいる。

 さらに、23日に行われた男子200メートル自由形決勝の表彰式では、スコットが孫の握手を拒んだ上に壇上での一緒の写真撮影を拒否。これに対して、今大会でライバル選手から距離を置かれている孫は、スコットの顔面を指さして「お前は負け犬。勝ったのは俺だ!」と叫ぶなど、すでに事態は手に負えない一触即発の雰囲気となっている。

 しかしながら、五輪金メダリストのアダム・ピーティ(Adam Peaty、英国)やリリー・キング(Lilly King、米国)ら多くのトップ選手からは、ホートンとスコットの孫への態度を支持する声が上がっている。

 こうした中で、対立し合う3人にはFINAから正式な警告が出された。今後の大会で同様の抗議行動が繰り返されるのを防ぐため、同連盟は新たに厳しい行動規定を導入することを検討している。(c)AFP/Alastair HIMMER