【7月25日 AFP】製薬大手アラガン(Allergan)がこのほど、同社の人工乳腺バッグ(乳房インプラント)の一部製品を全販売地域を対象に自主回収(リコール)すると発表した。米食品医薬品局(FDA)が24日、明らかにした。リコールの対象となったのは「バイオセル」と呼ばれる製品で、表面がざらざらした「テクスチャードタイプ」だという。希少がんとの関連性が指摘されていた。

 FDAの要請を受けて実施された今回のリコールを受け、今後のバイオセルモデルの販売はできなくなった。在庫を抱える医療関係者からの返品も予想される。

 フランスやカナダでは、同型のインプラントの取り扱いが全面的に禁止されているが、FDAはリコールを要請するにとどまった。インプラント使用者に対する除去の勧告もしない。非ホジキンリンパ腫の一種、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)の比較的低い発症リスクに比べて、外科手術のリスクの方が大きいと判断したためだ。

 バイオセルには、ずれを防ぐ目的で表面にざらつきが施されている。米国で流通しているその他製品の表面にざらつきはない。ポリウレタンで被覆されたものもある。

 インプラントの周囲では、ALCLによって腫れと液体貯留が引き起こされる。インプラントのざらついた表面と周辺組織との間の摩擦によって炎症が起きていると考えられているが、女性がALCLを発症している原因についてはまだ詳細には分かっていない。特定のインプラントがALCL発症率の増加と関連があるとして注目されるようになったのは2011年だ。

 これまでのところ、この種のリンパ腫症例の大半はアラガン社製インプラントを使用している女性で見つかっている。FDAの統計によると、7月6日の時点で世界各地で判明している全症例は573例で、そのうち84%で同社製のインプラントが使用されていたという。また、FDAが世界各国で確認したこのがんによる死者33人のうち、インプラントの種類が分かっているのは13人。そのうちの12人がアラガン社製品の利用者だった。

 FDAによると、バイオセル使用下での乳房インプラント関連ALCL(BIA-ALCL)の発症リスクは、「米国で市販されている他社製テクスチャードインプラント使用下でのBIA-ALCL発症リスクの約6倍」であることが、同局の調査で明らかになったという。

 アラガン社が製造している種類のいわゆる「マクロテクスチャード」インプラントの割合は、米国で販売されている乳房インプラント全体の5%足らずだ。

 FDAのエイミー・アバネシー(Amy Abernethy)副長官は、BIA-ALCL症例の総数が「比較的少ない」ことを同局は認めているものの、「特定メーカーの製品が患者への重大な有害事象と直接関係していることを示唆する証拠が示された時点」でリコールを要請したと述べている。(c)AFP