■「男のくせに」

 ゲボルグさんは、化粧品についての投稿を始めた当初、ネット上の攻撃的な書き込みに対処するのに苦労したと明かす。ゲボルグさんがアルメニア系であることを引き合いにした内容も多かった。「アルメニアの文化ではそんなことは許されない、不道徳だ、と言われた」

 ゲボルグさんはネット上では派手なメークをしているが、街を歩く時にはトラブルに巻き込まれないようメークは薄くするかまったくしないようにしているという。

 他の有名男性美容ブロガーたちも、ネット上や実社会での嫌がらせを報告している。インスタグラムのフォロワーが40万人を超えるイーゴリ・シニャック(Igor Sinyak)さんは今年、若者グループから脅迫されたという。

 だが、12年前から活動するロシア初の男性美容ブロガーを自称するセルゲイ・オストリコフ(Sergey Ostrikov)さん(31)は、ロシア人はこの種のコンテンツに対し以前よりはるかに寛容になったと話す。オストリコフさんは現在、二つのコスメブランドを手掛けている。

「最初の頃は猛烈に批判された」「大半は女性からで、『男のくせによくも女性だけの世界に入ってきたものだ』と言われた」とオストリコフさんは話す。

 だが、男性美容ブロガーが増えたことは、ロシアのLGBTコミュニティーにとって「間違いなく」力になっているという。「子どもの頃からこういうものを見ている『デジタルネーティブ』世代は、すべてをとても冷静に受け止めている。この10年間であらゆることが変わり、以前よりも楽になった」と続けた。(c)AFP/Theo MERZ