【8月4日 AFP】アイスランドは欧州で最も森林の少ない国といわれるが、9世紀末に北欧の海洋民バイキング(Viking)が入植するまでは、緑豊かな森が広がる島だった。今、土壌侵食でまるで月面と化した低地の景観を一面の森へと変えようと、国を挙げて植林の試みが進んでいる。

 バイキングが北大西洋の無人島だったアイスランドに入植したのは9世紀末。当時は島の4分の1以上を、カバの木を中心とした森が覆っていた。それから100年とたたないうちに、バイキングは家を建てる資材として、また放牧地を切り開くため、もともとあった森林の97%を伐採してしまった。

 今や、アイスランドで森を目にすることはほとんどない。植林された木々もまだ若すぎて、「アイスランドの森で迷子になっても、立ち上がるだけで道が見つかる」と冗談の種になるほどだ。

 厳しい気候に加え、活発な火山活動の影響で、森林の再生はひたすら困難だ。火山灰や溶岩が地面を覆ってしまうこともしばしばある。

 国連食糧農業機関(FAO)の2015年の報告書によれば、アイスランドの国土に占める森林面積は0.5%しかない。木々が生えていないということは、土壌の侵食を防いだり保水性を高めたりしてくれる植生が存在しないことを意味する。世界最北の島国アイスランドは、広範な砂漠化の危機にあるのだ。

 1950年代に森林再生の取り組みが始まり、特に1990年代の努力が功を奏して、岩がちなアイスランドの大地にはいくばくかの緑が復活した。植林活動は現在も続いている。だが、アイスランドの土壌は窒素含有量が少ないため肥沃(ひよく)化がなかなか進まず、木々の成長速度は南米アマゾン(Amazon)の熱帯雨林の10分の1程度しかない。

 アイスランド政府は2018年9月に発表した気候変動対策の中で、植林を優先事項の一つに掲げた。

 そして、矛盾したことに、気候変動に伴ってアイスランドの木の成長速度は上がっている。森林保全当局のエーデルスタイン・シガーゲイルソン(Adalsteinn Sigurgeirsson)氏は、「温暖化によってアイスランドでは樹木の成長が促されているようだ。その結果、炭素隔離率も上がっている」と語った。(c)AFP/Jeremie RICHARD