【7月19日 AFP】京都市にあるアニメ制作会社「京都アニメーション(Kyoto Animation)」を無残に焼き払い、屋上へ逃げようとした人々も含め33人の命を奪った火災から一夜明けた19日、その詳細が浮かび上がってくる一方で、放火したとされる容疑者の動機は依然不明のままとなっている。

 男が可燃性の液体をまいて火を付けたとされる現場の目撃者らは、火災の様子を「地獄絵図だった」と表現している。

 識者らや消防当局は、火はほぼ一瞬にして制御不能なまでに燃え広がり、中にいた人々が逃げる余裕は皆無に等しかったとみている。

 過去数十年間に国内で発生した中で最も凶悪な犯罪の一つとみなされる今回の事件を受け、国内外に悲嘆の声が広がり、日本の名高いアニメ業界のファンらは甚大な損失に戦慄(せんりつ)している。

 19日朝には真っ黒に焦げた建物の前に人々が花を手向け、合掌した。

 放火の動機は明らかになっていない。容疑者として41歳の男の身柄が確保されているが、重度のやけどを負っているため捜査は進んでいない。男は入院しており、19日の時点で意識不明とされる。

 火を付ける前に「死ね」と叫んだとされるこの男については、わずかな情報しか判明していない。地元メディアによると、男と京都アニメーションに関係はないとみられ、また男は現場に複数の刃物と金づち1本を持参していたという。

 男が京都アニメーションに自身の作品を盗まれたと思い込んでいたとの報道もある。京都新聞(Kyoto Shimbun)は、男が警察に「小説を盗んだから放火した」と供述したと伝えている。

 遺体の多くは屋上に続く階段で見つかっており、避難の最中に犠牲になった可能性が高い。

 ある消防当局者はAFPに対し、建物に火災予防規則への違反はなかったものの、ガソリンにより急速に燃え広がった火で人々は逃げ遅れ、建物の各階をつなぐらせん階段が炎上を加速させたとみられると話している。

 今回の火災は、日本で最も知名度の高い文化財の一つに数えられるアニメ業界に大きな衝撃を与えた。

 米アニメ配給会社センタイフィルムワークス(Sentai Filmworks)はオンライン上で募金を呼び掛け、19日午後までにおよそ130万ドル(約1億4000万円)が集まった。

 同社は「京アニを襲った悲劇の影響を受けた人々への支援を表明してくれた全ての人々に感謝する。皆が一つになれば、この信じ難い暗闇の時にも光をともすことができる」とコメントしている。(c)AFP/Quentin TYBERGHIEN