【8月4日 AFP】雪の中を最後の数メートル進むのが一番きつい。だが、ようやく山小屋に到着すると、管理人のサラ・カルティエ(Sarah Cartier)さん(30)が笑顔で出迎えてくれる。赤ちゃんが眠っているから大きな音を立てないでと丁寧にお願いされた。

 フランス・アルプス(French Alps)の標高2841メートルの地点に立つ山小屋「シャルプア(Charpoua)」は、115年もの間、登山者たちを迎えてきた。モンブラン(Mont Blanc)は標高4810メートルなので、ちょうど半分ほど登った辺りだ。

 小屋には水道も電気もなく、用を足したい時には外へ出て少し山を登らなければならない。実に原始的だ。それが分かると、誰もシャワーはあるかと聞いてこなくなると、サラさんは冗談めかして言った。

 だが、山小屋の入り口から見渡す景色は、息をのむほど美しい。ただし、高山病で既に息も絶え絶えになっていなければの話だ。

 サラさんの仕事は、小屋の予約をした登山者らの世話と彼らが予定通り到着したかを確認することだ。もし、到着していなければ通報をしなければならない。

 サラさんのここでの仕事は6月末から8月末までで、今年で5シーズン目となる。氷河から水をくみ、自家製パンを焼き、地元の有機食材を使って料理をする。必需品はシーズンの初めにヘリコプターで届けられており、毎週金曜日にはスイスからパートナーが新鮮な食材を持ってきてくれる。

 悪天候が数日続いて登山者がここまで来られない時には、息子のアルマン君の世話をしながら静かにのんびりと過ごす。アルマン君はとてもおとなしく、登山者たちの人気者だ。

 取材に訪れた日の夜、山小屋は満室だった。AFPの記者2人とガイドの他、登山パーティーが何組かいた。皆で腰を下ろして自己紹介をし、登山ルートや天候に関する情報を交換し合った。

 ビールで喉を潤していると、ガスストーブの上の鍋から立ち上るスープやオーブンから漂ってくるチョコレートケーキのにおいが木造の山小屋を満たした。食卓を囲むと、サラさんが毎日、外で充電している二つのソーラーライトに明かりがともされた。

 翌日の朝食後、登山者たちは山小屋を後にした。サラさんは、山頂を目指す人や下山する人たちを、いつもと変わらぬ笑顔で見送ってくれた。(c)AFP/Gersende RAMBOURG