【7月19日 Xinhua News】中国では、駅の入場や買い物での支払いなど顔認証技術は既に珍しくなくなっているが、東北地区ではこの技術が養豚に使われている。

 吉林省(Jilin)白山市(Baishan)撫松県(Fusong)の長白山奥地にある「山黒豚」の飼育場では、靴箱ほどの大きさのロボットが養豚場の状況を天井から監視しており、数百キロ離れた省都、長春で豚の活動状況や養豚場の温度、湿度、アンモニア濃度、PM10などをリアルタイムに把握することができる。吉林精気神有機農業の張遠征(Zhang Yuanzheng)常務副総経理は「ロボットが豚の顔をスキャンすると、その豚の飼育期間や体重、防疫情報などが映し出される」と説明する。

 同社は2017年、EC大手の京東集団(JD.com)傘下の京東数字科技(JD Digits)と提携し、人工知能(AI)技術を養豚に導入した。「豚の顔認証」もそのうちの一つ。これにより給餌ロボットはそれぞれの豚の状況に基づいて餌を与えることができるようになった。生産量が20万頭であれば年間1200万元(1元=約16円)の節約が見込まれる。

 張常務副総経理は、AIが豚舎内のアンモニア濃度を自動測定し、清掃が必要かどうか教えてくれるので、飼育員の無駄な作業が減り、人件費も削減できたと語る。以前は飼育員1人で200頭の豚を管理していたが、AIの導入で800頭の管理が可能になったという。

 同社の孫延群(Sun Yanqun)総経理は、AIによるトレーサビリティーシステムにより、豚の餌の量や体重の増加速度に基づき栄養プランを適時調整し、豚の肉質を改善できようになったと説明する。

 吉林省農業科学院牧畜科学分院の張樹敏(Zhang Shumin)2級研究員は「中国では個人経営の養豚業者が多く、飼育方法も比較的放任的だ」と指摘。AIは高いレベルの技術が使われておりコストも高いため、多くは大型養豚場で使用されているという。

 中国は世界最大の養豚国であり、東北地区だけでも世界の約6%の豚を生産している。張研究員もAIの養豚への応用は一つの流れだが、今後広がるかどうかは具体的な状況を見る必要があるとの見方を示す。

 張常務副総経理は「ビッグデータを活用した豚の品種改良に参入するつもりだ」と表明。AI技術の価値が分かった今、農作物の栽培や育種、食肉処理・加工などの作業過程でAIをより多く活用していきたいと語った。(c)Xinhua News/AFPBB News