■遠いゴール

 職場での嫌がらせ問題は、Kポップや映画、医療や学問の世界に至るまで、ほぼすべての分野で発生している。だが、社会的セーフティーネットが脆弱(ぜいじゃく)で、失業率も上昇していることから、失職や降格を恐れ、被害者は声を上げにくいのが現状だ。

 労働者団体「ワークプレース・カプチル119(Workplace Gabjil 119)」の活動家パク・チョムギュ(Park Jeom-gyu)氏は、国としてのゴールはまだずっと先だと話す。改正法で罰せられるのは、いじめの加害者ではなく、声を上げた被害者を罰した雇用主だけだと指摘する。

「だが、変化に対する意味のある一歩であり、職場で嫌がらせを受けた時、比較的安心して報告できると感じる人が増えるだろう」と語った。

 ジョンさんを含む多くの韓国人労働者にとって、今回の法改正は遅すぎたようだ。

 ジョンさんは加害者から謝罪を受けるどころか、CEOによって解雇された上、名誉毀損と誹謗(ひぼう)中傷で訴えられた。実際には裁判まで発展しなかったが、ジョンさんは自殺まで考えたという。

「元雇用主は、私を人間として扱ってくれなかった。消耗品の一つと考えていた」と語った。(c)AFP/Claire LEE