【7月16日 AFP】探査車(ローバー)3機、星条旗6枚、着陸に成功または失敗した探査機数十台、さまざまな部品、カメラ、ごみ…。宇宙開発が行われてきた結果、月には無数の物体が散乱している。月では将来、観光などの人的活動が行われる可能性もあり、一部の専門家からは、これらを遺産として保護するよう求める声も上がっている。

 すべての始まりは1959年9月13日。この日、旧ソ連の月面探査機ルナ2号(Luna 2)が「雨の海(Mare Imbrium)」に衝突した。390キロの機体は衝突時に粉砕したと考えられている。

 その後、ルナの後続機が相次いで打ち上げられた後、米国がレインジャー(Ranger)やサーベイヤー(Surveyor)などの探査機を使った月面探査計画を実施。そしてついに1969年7月20日、ニール・アームストロング(Neil Armstrong)、エドウィン・オルドリン(Edwin Aldrin)両飛行士による初の有人月面着陸が実現した。

 2人は「静かの海(Sea of Tranquility)」に22時間滞在し、帰還の際には不要な物をすべて月に残して行った。着陸船の下降段やカメラ、月面用ブーツ、トング(物を挟む道具)、記念に持ち込んだ品々、排せつ物収集機器などだ。

 その後も、アポロ(Apollo)の後続機による5回のミッションが成功し、月面にはさらにたくさんの物体が残された。

 宇宙空間に人が残した「遺産」の保護を訴える非営利団体(NPO)「For All Moonkind(「月に属するすべての物のために」という意)」によると、月面には宇宙飛行士らによる痕跡が約100か所あるという。 また、月面に残された物体の重さは約167トンに上る。

 2017年に設立された同団体の共同創設者である米ミシシッピ大学(University of Mississippi)法学部のミシェル・ハンロン(Michelle Hanlon)教授は、法的に言えば、「こうした場所は保護対象には一切なっていない」と指摘する。同団体が設立される以前、欧州宇宙機関(ESA)のヨハン・バーナー(Jan Worner)長官は、月の星条旗を持ち帰りたいと冗談を言っていたほどだ。