【8月5日 AFP】チリンチリンとベルを鳴らしながら、ミャンマーの子どもたちが自転車で先を争うように下校する。子どもたちが乗っている自転車は、シンガポールやマレーシアで不要となったシェア自転車を再利用している。国民の半数以上が貧困状態にあるこの国の子どもたちの通学が楽になるようにと寄付されたものだ。

 ヤンゴン近郊のニャーコン(Nhaw Kone)村に住むテー・ス・ワイ(Thae Su Wai)さん(11)は、自宅から学校まで10キロの道のりを片道2時間かけて歩いていたが、もうその必要はない。「勉強したり友達と遊んだりする時間が増えた」と顔を輝かせて言い、手に入れたばかりの自転車に乗って勢いよく走り去った。

 テー・ス・ワイさんは、マンダレー(Mandalay)の起業家、マイク・タン・トゥン・ウィン(Mike Than Tun Win)氏(33)によるプロジェクト「レスウオーク(Lesswalk)」で、最初に自転車を寄付された子ども200人の一人だ。

 マイク氏はシンガポールで教育を受けビジネスの学位を取得し、8年前にミャンマーに戻った。「何時間も歩いて学校へ通っている子どもたちを見て、本当に胸が痛んだ」

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の推計によると、ミャンマーの子どもたちの55%は貧困状態にあり、17歳の半数は教育をまったく受けないかほとんど受けないまま成人になる。

 マイク氏は、自転車シェアリングサービスを提供するオーバイク(oBike)やオッフォ(Ofo)、モバイク(Mobike)がシンガポールとマレーシアから撤退し、数千台の自転車が「墓場」に積み上げられているのを見て、チャンスだと思ったという。

 マイク氏は今年初め、自転車1万台を買い取ってミャンマーに送り、シェア用のパネルを外し、後部にシートを取り付け、明るいオレンジ色と黄色に塗り替えて子どもたちに渡した。

 マイク氏は自転車を使うことで、学校で過ごす時間が長くなる子どもが増え、もっと教育を受けられるようになり、「貧困から抜け出せる」と期待している。

 かかった費用は自転車1台当たり、輸送料と配送料を含めわずか35ドル(約3770円)だった。半分はマイク氏が、残りの半分は複数のスポンサーが負担した。

 プロジェクトは始まったばかりだとマイク氏は話す。勢いを維持し、5年間で計10万台を寄付することを目指している。

「シンガポールでは価値がなかったかもしれないが、貧しい国では貴重品だ」と語った。

 映像は、6月15、18日に撮影。(c)AFP