■奇妙な天体「タイタン」

 タートル氏は、2004年にNASAの土星探査機カッシーニ(Cassini)から地球に送信されたタイタンの詳細な画像を初めて受信した探査チームの一員だった。

 1997年に打ち上げられたカッシーニは7年かけて土星に到達した。

 カッシーニからタイタンの表面に投下された欧州宇宙機関(ESA)の探査機ホイヘンス(Huygens)は、通信が途絶えるまで近接写真を地球に送信し続けた。タイタンの表面を横切る川の画像は多くの人を驚かせた。

「本当に画期的な成功だった」と、タートル氏は振り返る。

 それから数年かけ、タイタンの実体が明らかにされていった。タイタンは水星や地球の衛星である月よりも大きい奇妙な天体で、表面温度が氷点下179度前後、水が凍結した氷でできた外殻を持ち、表面には液体メタンが流れる川や湖が存在する。タイタンの表面を構成する渓谷、砂漠、山脈に、風が吹き、雲が流れ、(メタンの)雨が降る。氷火山からは水が溶岩のように噴出しているかもしれない。

■原始の地球

 タイタンの環境は、最初の生命体が誕生する以前の初期の地球に似ていると考えられている。また、科学者らは、化学から生物学へ飛躍的な変化を遂げる上で、液体メタンが水と同じ役割を担っている可能性があると推測している。

 小型の化学実験室として機能するドラゴンフライは数年をかけて探査地点間を飛行して移動し、研究者の間で生命の構成要素と呼ばれる炭素を含む複雑な有機分子を探す予定だ。

 古代の川床から採取される分子は、水と接触した痕跡がない分子とは異なる可能性がある。地球初期の歴史の痕跡はすべて失われているが、タイタンは過去への旅を提供できるかもしれない。

 タートル氏は惑星探査を通じて「太陽系が人間の想像以上に創造性に富んでいる」ことを学んできたという。「いつも驚きがある」

 タートル氏はドラゴンフライの打ち上げ時に、探査機を搭載したロケットが離陸する瞬間を自分の目で見たいと考えている。

「そういう計画になるだろう」とタートル氏は話した。(c)AFP/Ivan Couronne