【7月9日 AFP】独銀行最大手のドイツ銀行(Deutsche Bank)が大規模な人員削減方針を発表した翌8日、アジアから米国に至る同銀各店の行員らの間には、陰鬱(いんうつ)な空気が広がっている。一部ではすでに解雇通知を手にした人もいる。

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 ドイツ銀行は7日、2022年までに全従業員の5人に1人に相当する1万8000人の削減方針を発表。これを受け、同行の株価は6.66ユーロ(約810円)まで下落し、終値は5.4%安の6.79ユーロ(約830円)となった。

 人員削減が最も影響するのは、同銀の株式売買業務。その他の投資銀行部門は維持する計画。

 アナリストらは、同銀は数十年にわたって米ニューヨーク・ウォール街(Wall Street)の巨大投資銀行を模倣してきたが、今がそれをやめる潮時だと指摘している。

 大手金融グループINGのアナリストは、長期的に見て事業再編は「ドイツ銀行にとって必要不可欠」だとしながらも、計画実行には必然的に「相当なリスクが伴う」と警告した。

■ブレグジットと板挟みの英シティー

 事業再編の影響が最初に表れているのがアジアだ。同銀はすでにオーストラリアのシドニーからインド・ムンバイまでの支店で、株式売買業務を縮小している。

 米ブルームバーグ・ニュース(Bloomberg News)が報じた内部関係者の話によると、香港の高層ビル、環球貿易広場(ICC)にある支店ではここ数日間ですでに出勤する行員数が大幅に減っている。さらに事業再編計画が伝えられ、行員らはここ数週間のドイツ本部とアジア各地の支店とのコミュニケーション不足に不満を漏らしているという。

 一方、英ロンドン中心部金融街シティー(City of London)では余剰人員とされた行員らが、私物の入った箱やかばんを手に、気落ちした様子でドイツ銀行の建物を後にしていた。近くのパブには昼すぎから約50人が詰めかけ、ビールを流し込む人の姿も。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)を前にシティーの銀行員らの将来はすでに波乱含みで、中には暗い表情を浮かべている人もいた。

 また米ウォール街にあるドイツ銀行米国本社でもロンドン同様、行員が私物を取りに来たり、解雇通知とみられる白い封筒を持って玄関から出ていったりする様子がみられた。(c)AFP/Louis TORRES TAILFER