■元ナチスの裁判で語った人体実験

 コールさんは2015年、ナチス・ドイツ親衛隊(SS)の元隊員で、「アウシュビッツの簿記係(Bookkeeper of Auschwitz)」と呼ばれ、ハンガリーのユダヤ人30万人に対する殺人ほう助罪に問われたオスカー・グレーニング(Oskar Groening)被告の裁判に証人として出席した。

 証言の中で、コールさんは双子に関心を示していたメンゲレ人体実験での経験を語った。コールさんには双子の姉妹のミリアムさんがいた。10歳の時、メンゲレに定期的に謎の薬物を注射されたが、どうにか生き延びることができたという。

 コールさんが高熱で苦しんでいると、メンゲレはベッド脇で「皮肉な笑み」を浮かべ、「気の毒に。彼女は幼すぎるから、もって2週間だろう」と述べたという。「私が死んだら、ミリアムが心臓への注射で殺される、メンゲレは(双子を)比較するために死体解剖をするに違いない」と思ったという。

 1945年1月27日、ソ連軍がアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所を解放。コールさんとミリアムさんも自由の身となったが、両親と姉2人は、アウシュビッツで亡くなった。

 ナチスが占領下のポーランドにつくったアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所では1940~45年、100万人ものユダヤ人のほか、10万人に上る非ユダヤ系ポーランド人、ロマ人、ソ連人捕虜、反ナチスのレジスタンス闘士たちも虐殺された。アウシュビッツは、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)による欧州のユダヤ人大虐殺の象徴だった。(c)AFP